哲学講座「時代を哲学する」第5講「万引き家族」と対話

投稿日: 2019/01/25 7:49:35

意見の違いがあっても、暴力沙汰に及ぶことなく、すべては対話で解決されて、助け合って、この社会を生きています。乳児は、母親からの呼びかけに応答する対話をつうじて、人間らしくなり、人間として成長してゆきます。

対話は、人間を人間として形成する土台となるコミュニケーションの手段です。「対話が続いている間は殴り合いは起こらない」というドイツの諺があります。

北朝鮮の核・ミサイル開発が進行するなかで、2017年、米朝関係は核戦争前夜の対決に激化しつつあったが、それを転回したのが、2018年4月の南北首脳会談という対話でした。対話は相互の利益をすりあわせ、合意によって問題を解決しようとする民主主義の土台です。

人間の言語は、抽象的世界を取り上げることにより、時・空を超えて無限に情報を伝達しあうコミュニケーションの手段です。その相互媒介の中心的な役割を担うのが人と人との間の対話なのです。対話は人間らしい心を生みだし、社会的存在としての人間を人間に形成させる中心的手段であり、対話によって人間は人間らしく成長できるのです。

人間は、対話をつうじて人間らしく人間の本質を身につけていきます。人間の本質とは、個人としては「自由な意識」をもつことであり、社会的存在としては「共同社会性(対等、平等、友愛)」をもつことです。人間は対話をつうじて人間の本質である「自由な意識」を発展させて、真理に接近させ、対話は、人間の本質としての「共同社会性(対等、平等、友愛)」を生みだします。「万引き家族」では、対話が心を閉ざしていた幼女の心をひらき、人間性を回復させました。朝鮮半島では、文在寅大統領と金正恩委員長との対話が、非人間的な核戦争の危機を転じ、平和体制の確立へと方向転換をしました。

しかし、搾取で分断する資本主義社会は、対話を拒否します。対話が民主主義の土台であることを知っているからです。アベ政権が辺野古の新基地建設で徹底的に対話を拒否していることは、ご存じのとおりです。ですからマルクス、エンゲルスは『共産党宣言』のなかで、労働者革命の第一歩は「民主主義をたたかいとることである」と述べています。国連憲章は、第一次、第二次世界大戦を踏まえて、国際紛争の平和的手段による解決の原則を打ちだしていますが、平和的手段とは、1つには対話による紛争の解決であり、2つには対話は必ず真理に接近した解決を生みだすことを意味しています。

人間解放の統一戦線は、対話をつうじて実現しうるのです。沖縄における統一戦線である「オール沖縄」は、戦争に反対する保守と革新の対決を超える対話から生まれました。来年の参院選において、32の一人区で野党統一候補を実現するには、沖縄に学んで徹底して討論を積み重ねることが重要になっているのです。