「一粒の麦」NO.225 会長エッセー 「老い」の話

投稿日: 2015/01/03 3:39:24

主題の「老い」の話を書く前に、浅学であることを証明した先月号の間違いを正しておきたいと思います。先月号は「人生の話」でした。そのなかで、蚊の食事すなわち吸血の話を書きました。以前、蚊が血を吸うのは一生で一回だという話を聞いたことがありながら、それを深く調べもせず、まるで食事として血を吸 は花蜜や植物の汁液から摂り、血を吸うのは卵の発育のためで、高タンパクな動物の血を必要とするからとのことでした。ですから、雌の蚊が一生に一度の崇高な行為を命がけで行っていることになります。困りましたね、そうなるとたたき殺すことも憚れるようになりますが、デング熱などという問題が起こるとそうも言っておれないし。それにしても文章を書く資格はないなと頭を抱えました。

継続は力なり、老いと闘う

さて「老い」の話です。こんな主題を思いつくのは、還暦を三つも超えたからでしょうか?なんの脈絡なく書きなぐります。

肉体の「老い」の話。筋肉は何歳になっても成長するといいます。スキーヤーだった三浦雄一郎さんは、80歳でエベレストに登りました。ちょっと信じがたい快挙です。ずっと元気だった訳ではないらしく、スキーヤーを引退した後の不摂生がたたって65歳の時の体はボロボロだったとのこと。そのころ、99歳の父が颯爽とスキーを楽しんでいる姿を見て改心し一念発起して体を作り直し、その後の大活躍になったというのですから、中年・初老の励みになります。何歳になっても大丈夫なのだ。

末成り(うらなり)青びょうたんだった私は、それを恥じてずっと運動を続けてきました。今年は、稲刈りで30㌔の米を持ち上げ運ぶ作業のためと、年齢ゆえの願望があって腕立て伏せなどのトレーニングを2倍増やしました。稲刈りの時には30㌔ものを、2日半で800回くらい持ち上げるのですから、鍛えておかないと仕事にならないのです。この筋トレで明らかに筋肉は増強されました。30㌔の米も例年より軽く感じました。なるほど、さぼればいくらでも弱体化するが、継続的に鍛えれば「老い」と闘うことができる。実感しました。

先日、104歳の宮崎秀吉さんが、アジア・全日本マスターズの100㍍競争を34秒ちょっとで走りきったというニュースがありました。104歳といわれると、ちょっと引いてしまいますが、これも大きな励みです。

いのちのリレー

「老いる」と慈しむこころが強くなるようです。私には孫がありませんから、姪の子どもたちと遊ぶのが楽しみです。私が稲刈りなどで田舎に帰るときは、姪が子ども連れで帰ってくれるのです。その子どもたちと、いつも手をつないで父の墓参りをするのです。手を差しだすと手をつないでくれます。その手の小さく柔らかいこと。それだけで胸が熱くなりせり上がってきそうになります。この小さき者たちの未来が幸せでありますように。それはきっと自分が滅びの段階に入りつつあるがゆえの感情なのでしょうね。手をつなぐと、手を通じて心がつながる気がします。そんな何でもない行為に胸が熱くなるのは、いのちのリレー、バトンの渡し役「老い」のせいでしょうか