哲学講座「時代を哲学する」第9講「日本が売られる」

投稿日: 2019/05/23 4:55:47

今回の講座は、「日本が売られる」です。講義では、日本の政治の大元は、「異常な対米従属」「ルールなき資本主義、大企業・財界の横暴な支配」のもとに、国民の苦しみと貧困が続いています。その異常な原因は、日本政府が「日米安保条約」のもとで、日本をアメリカに売り渡していることにあると説明され、日本は、アメリカ経済を支えるために、米国債を買い続けて、ドルが米国に還流し、経済を支えていると説明された。

本講義では、大門実紀史参議院議員の『カジノミクス』が今話題となっており、アメリカの要求に応えるものとして、「カジノ実施法」「異次元の金融緩和」「年金積立金バクチ」の3本柱を説明されました。

カジノ解禁

「カジノ解禁」についての解説は、なんといっても「トバク」であり、刑法185条で処罰される犯罪である。2017年2月に、アベ首相は強行成立させた「カジノ解禁推進法」を手土産に、米トランプ大統領に会い、大手カジノ企業ラスベガス・サンズの紹介をうけています。大阪は、カジノ誘致のために2025年大阪万博を隠れ蓑にして、地下鉄延伸などの公共インフラ整備を企んでいます。これについて辰巳孝太郎参議院議員は、大阪万博誘致に向けたオフィシャルパートナーに海外の大手カジノ企業がずらり並んでいることを指摘しています。また、鳥畑静岡大教授は、衆院内閣委員会で「カジノ利益のほとんどは、アメリカの一部のファミリー、投資家に還元されることを指摘」された。実施させないために、法の仕組みからして、「自治体が国へ申請しない限り、カジノは誘致できない」ので、都道府県議会で何としても中止に追い込まなければならないと説明されました。

異次元の金融緩和

次に「異次元の金融緩和」についての説明がありました。アベノミクスの第一の柱は、「大胆な金融政策」により、20年来のデフレからの脱却をめざすことにあり、政策による日銀から供給された大量の円は銀行にとどまり世の中に出回らないことからデフレ脱却ができません。デフレの真の原因は、政府・財界のバブル後の不況を理由とした賃金引き下げ政策により購買力が低下し、物価が下がることにある賃金デフレであるのに、企業は、大量の「内部留保金」を持ちながら賃金を上げていない。と解説されました。

なぜそのような政治となるのか、解説されました。「大胆な金融政策」とは、日銀は、資金供給のために、銀行の持っている国債を次々に買占め、日銀から銀行へジャブジャブ資金を供給し、いまや国債の42%を保有、また「異次元の金融緩和」を始める前と比べて、株価を支えるために12倍近くに株保有を増大させた。

年金積立金バクチ

これは、日銀のETF買いで、「株価によって連動して運用される、株価指数連動型上場投資信託」といいます。アベ政権はさらなる株を買い占める資金として、国民の「年金積立金」を株に投入して株価を支えています。

昨年7月1日、サンデーモーニングでおなじみの解説者、寺島実朗氏は、「いつかとんでもないツケを払わされる日が来る。この政権を支持する流れの背景には、株価が2倍になったこと、これは、日銀のETF買いと、我々の年金基金の投入によるもの、そんな国は世界にない」と解説、また、昨年7月19日付、赤旗では、「公的年金の積立金と、日銀が株式市場に大量の資金を投入した結果、2018年3月末時点で、東京証券取引所一部上場企業2064社の内少なくとも710社で「公的マネー」が「筆頭株主」になっていることが報道されました。このことは、日本の代表的な大企業の3社に1社で公的マネーが「筆頭株主」となる異常事態となっていて、日銀のETF買いと年金基金の2つの公的マネーを合わせた投入額は「公的マネー投入額の多い企業」一覧表で確認すると、第1位のトヨタ、1兆9497億円、2位、ソフトバンク、1兆345億円、3位、三菱UFJ、1兆482億円となっています。講義では、「異次元の金融緩和から脱却しょうとするとき、買い占めた国債,株を手放すことにより、円に対する信頼は一挙に崩壊し、『悪政インフレ』による経済パニックを引き起こす危険」があると解説されました。

ではなぜ、そのような「ルールなき資本主義」となっているのだろうか、講義では、「金融緩和の真の原因はアメリカに」の解説に入りました。1999年1月ダボス会議により、日本に対して露骨に日銀の国債引き受けを含む、大胆な金融緩和(金利の引き下げ)を求めました。理由は、アメリカの財政赤字を減らすために、「円安ドル高(円を売ってドルを買う)で大量の『ドル』を確保」し、アメリカの国債を買い続けて、アメリカ国内へ「ドル」を還流させるためですと解説されました。詳しく説明すると、日本が、アメリカ国債を買い続けるためには、日本の金利を金融緩和により、アメリカの金利より絶えず低く設定し、それにより、日本国債はアメリカ国債より低い利回りとなり、日本がアメリカ国債を買い続ける理由となると解説されました。そのために、公的資金(日銀のETF,年金基金での株買い占め)の投入により、日本企業を支え、一旦は安定させて、本来の目的である、円安ドル高(円を売ってドルを買う)の操作を行い、大量のドルを確保して、そのドルでアメリカ国債を買う、アメリカはそのドルで、アメリカの「貿易赤字」「財政赤字」の穴埋めに、アメリカの軍人の給料、アメリカ国民の医療費の費用となる、これが実態であると解説されました。

大元に日米安保条約

「どうしてこんなことになったのか」、講義では、このような一方的な外交政治、「異常な対米従属」の大元には、日米安保条約があり、アメリカが第2次世界大戦後に日本を占領した時代を継続させるために秘密裏に結んだものであること、その結果、沖縄をはじめとする日本全土にアメリカの基地がつくられ、日本はアメリカに対して軍事・外交・政治・経済的な従属(奴隷的なものでしょう)を迫られていますとの解説がありました。

では、アメリカから日本を取り戻すには、安保条約10条には、アメリカに終了通告すれば、その後1年で終了することが記載されています。つまり、問題は、日本で、安保条約の破棄を求める政府を実現しうるかにかかっている、つまり「安保破棄を共通認識とする統一戦線」をいかに早くつくるかが課題であると言われ、その第一歩が今年の参院選に向けての野党の統一候補の実現であるとまとめられました。