時代を哲学する 第2講 「万引き家族」と貧困

投稿日: 2018/08/31 6:50:33

「時代を哲学する」第2講「『万引き家族』と貧困」は8人が参加して9月15日に開かれました。この講座は1時間の講義の後、感想・意見を出しあって交流しています。これが魅力にもなっています。単発の受講もできますので、気軽に参加してください。毎月第3土曜、午前10時~12時まで。場所は広島県労学協です。

第71回カンヌ国際映画祭でパルムドール賞(最高賞)を受賞した是枝監督映画『万引き家族』を題材に「現代の貧困」を考えました。

『万引き家族』は本当の家族ではありません。高層マンションの谷間に建つ古い平屋の持ち主である祖母、そこに転がり込んだ両親と母親の妹、パチンコをする実の親に車の中に置き去りにされていて、男に連れ去られた祥太、両親から虐待され、家の外に出されていたところを家族に連れ去られた幼女の6人が、血のつながりは全く無いのに、本当の家族のように心通わせて暮らす「万引き家族」の主人公たちです。

老女の少ない遺族年金、男の日雇いの日銭、女のパート収入、風俗店で働く娘の稼ぎ、それを補うためのスーパーでの日用品の万引き。男は事故で働けなくなり、女は整理解雇され、老女は亡くなり、少年はわざと万引きを失敗して警察に捕まり、この「家族」は崩壊してしまいます。日本の現代の貧困が凝縮されたような「家族」です。是枝監督の日本の政治への批判と皮肉が痛烈に突き刺さる映画です。

是枝監督の問題意識である日本の貧困は、現代の新自由主義的資本主義が生み出したものであり、「格差と貧困」は解決すべき現代の根本的矛盾となっていることが語られました。日本では大企業の内部留保は425兆円にもふくれあがり、他方で年収200万円以下の労働者は1100万人を越えます。労働者の4割近くが非正規雇用となり、その8割が20万円未満の収入です。「万引き家族」もその犠牲者の一人です。

新自由主義とのたたかいは、「極端な貧困をなくすには、極端な富を終わらせなければならない」とのオックスファムの指摘にもあるように、富の偏在を解消するための、全世界を支配するアメリカ金融資本とのたたかいであり、各国でのたたかいと同時に、国際的な統一戦線の結成が求められていると提起されました。

①アメリカでの2011年のオキュパイ運動 ②引きつづくバーニー・サンダース派の99%のための国政革新の運動 ③イギリス労働党の社会主義者を自称するジェレミー・コービン氏の台頭 ④2011年ソウル市長に当選した朴 元淳(パク・ウォンスン)の応能負担の原則と普遍的福祉政策の結合により新自由主義と明確に対決する貧困解決の運動 ⑤日本では共産党が「ルールある経済社会」をかかげ、大企業大資産家の優遇税制をあらため、応能負担の原則にたった税制と社会保障制度の確立をめざしていること。また、ポルトガルやスペインでの緊縮政策に反対するたたかいが紹介されました。

最後に、マルクス・エンゲルスは搾取も階級もない自由で平等な社会主義社会をめざしたことが語られ、日本共産党の未来社会論にもふれられました。