NO.220 反骨爺のつぶやき

投稿日: 2014/05/25 1:39:03

NHKの「沈黙の春―レイチェル・カーソンの警告―」を観た。環境運動の先駆者、カーソンの没後50年記念番組である。「自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこに行ってしまったのか・・・春がきたが、沈黙の春であった」。

1939年、DDTに殺虫効果があることを発見したミュラーは、ノーベル賞を受賞した。それ以来、人間には無害な万能殺虫剤、農薬として、DDTは大量に使用されることになった。果たしてそうか?食物連鎖の頂点に立つ人体に影響はないのか?生物学者であるカーソンは、綿密な調査の上にその有害性を「沈黙の春」で告発した。全米農薬化学工業連盟は、猛烈なキャンペーンで反論し、その先頭に立ったのがモンサント化学工業会社(現モンサント)であった。しかし真実は勝利し、DDTは世界中で使用禁止となった。しかし農薬は、化学物質のほんの一部に過ぎない。

同じころ、燃えない油として注目を浴びたのがPCBであった。PCBも万能の潤滑油と喧伝されたが、生産されたアメリカ・五大湖の水鳥が急速に減少し、奇形が多発したところから、1970年代に禁止されるに至った。

現在3万種類以上の人口化学物質が製造され、農薬、塗料、洗剤、食品添加物などとして使用されている。アメリカでは、10人に一人が化学物質過敏症にかかっている。或る化学物質が体内に一定程度蓄積されると、コップの水があふれるように、微量の採取で過敏症を起こし、脳機能障害、頭痛、めまい、疲労感などの症状が発生する。1975年、家畜成長剤として使用されてきたDESが、「内分泌攪乱物質(環境ホルモン)」であることが発見された。人工化学物質がホルモンになりすまし、ヒトの精子減少、子宮内膜症などの生殖異常を生み出す。20世紀末、アメリカでは1500種類の化学物質を環境ホルモンの観点から見直すことにした。

あらゆる化学物質を製造しているアメリカの農業系バイオ企業のモンサントは、現在アメリカ政府の一員として、TPP交渉の先頭にたって日本に締結を迫っている。モンサントとアメリカ政府とは「回転ドア」の関係にある。日本の近未来を「沈黙の春」にしてはならない。