「一粒の麦」NO.232 会長エッセー 「巨樹の話」

投稿日: 2015/06/25 2:15:08

圧倒的な迫力ながら静謐な佇まいだからであろうか、巨樹の前に立つと粛然として「敬虔」な心持ちになる。畏敬の念と云ってもいい。幾百千年の歳月を生きてきたその命を敬意をもって仰ぎ見る。

初めて巨樹と会ったのは、岡山の北部にある「醍醐桜」というエドヒガンの一本桜だった。JR横川駅で働いていた頃企画していた「横川発・花紀行」というバス・ツアーの時だった。後醍醐天皇が隠岐の島に島流しにされる時にこの桜をみて感嘆の声を挙げたという。それが醍醐桜の名の由来というのだからその樹齢が知れよう。残念なことにこの時は設定が少し早すぎて蕾だった。心残りではあったが、蕾だと枝振りの全てが観れて、醍醐桜の全容を堪能することができた。

それでも咲いた姿が観たいと思い、翌年には「いの健広島センター」の会員交流の行事・「桜ウオーク」として再挑戦した。前年の反省で少し時機を後にずらした。ところがこの年は気温が高く、今度は花が全て散ったあとだった。この始末でいまだ咲いている風景を観ることは叶わないでいる。

ふつう花見をするのは「ソメイヨシノ」といわれる桜で、この桜は交配種で寿命はせいぜい100年程度と云われている。一方、エドヒガンは日本の桜の原種で千年を超えるものもあるという。巨樹・醍醐桜が存在する所以である。

巨樹に魅せられて、巨樹行脚をした。 中国自動車道の戸河内インターから10分程度入った筒賀・大歳神社の大銀杏にもことばを失う。樹齢は推定1100年と云われている。晩秋には黄金をまとい、散ると足元はこがね色一色になる。

樹高は49㍍といわれており、文字どおり仰げば尊しである。 川棚温泉の近くにあるクスノキも想像を絶する。遠目には森のように見えるところから「クスの森」と呼ばれているが、一本のクスノキが枝を張ったものだ。クスノキは寿命が長いから、環境が合えば目を瞠る巨樹に育つのである。枝張り東西58㍍、南北53㍍というから、想像することすら難しい。威風堂々の命である。

県北・西城町にある熊野神社の杉の巨木群も素晴らしい。これも「いの健広島センター」の山歩きの時に訪れたものだ。5人で手を繋いで囲んでみたが届かなかった。大杉群が陽射しをさえぎり、境内は初夏でもひんやりとしていた。いかにも神木の風情である。

巨樹は各地にある。どの樹も地元の人たちの誇りになっていて大切にされている。さて、どの写真にも人が写っているのがお分かりだろうか?比して巨樹ぶりを思い描いて楽しんでいただけたら・・・。