NO.285 反骨爺のつぶやき 高村よしあつ(顧問)

投稿日: 2019/10/27 3:22:16

早いもので、県労学協が、再建30周年を迎えた。いまや巷間にはAI(人工知能)解説書があふれかえっているところから、県労学協も、雑誌「経済」の編集長だった友寄英隆氏を招いて、「21世紀資本主義とAIの時代」と題する記念講演を実施した。

ここに紹介するのは、人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトディレクター・新井紀子氏の「AIと教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社)である。2001年に出発した東ロボくんは、7年経過して有名私立大学に合格できるほど「成長」して、労働力として私たちのライバルになる可能性が高くなってきた。しかし新井氏は、それでも東大に合格する日は来ないだろうという。

何故なら、AIは、コンピューター、つまり計算機であり、数式に置き換えることのできない、人間の脳がもつ「読解力」をもたないから、AIは、人間に取って代わることはできないというのである。そうなれば、AIに多くの仕事を代替されても、AIに代替されない「読解力}をもつ新たな労働需要が生まれるはずだから、余剰労働力はそちらに吸収され、引き続き経済は成長することになるかもしれない。

しかし新井氏は、そうはならないという。新井氏が独自に開発した、中高生の「読解力」調査によると、日本の中高生の「読解力」は、AIなみでしかない。となれば、AIで対処できない新しい仕事は、多くの人間にとっても苦手な仕事となる。このまま推移すれば、AIに仕事を奪われない労働市場は深刻な人手不足に陥っているのに対し、AIに仕事を奪われた失業者や最低賃金の仕事をする人々が巷間にあふれることになる。東ロボくんに取り組んできた新井氏の問題提起は、改めてAI問題の大きさと広がりを教えると同時に、友寄氏の「資本主義という社会のありかた」を問い直した講演も踏まえ、私たちも、真剣にAI問題を含む社会変革に取り組まねばならないことを示している。