NO.249反骨爺のつぶやき 高村よしあつ

投稿日: 2017/03/27 9:55:23

昨年9月に成立強行させた安保法制=戦争法にもとづき、南スーダンの駆けつけ警護など、戦争法は本格的な運用に向けて新段階に入ろうとしている。日本は戦争しない国から、戦争する国に大転換したのだ。

侵略戦争に加担した日本の科学者は、戦後その反省の上に、憲法9条の平和路線を堅持してきたが、戦争法はこの科学者の路線を大きく転換させようとしている。この動きを厳しく糾弾しているのが、池内了氏『科学者と戦争』(岩波新書)である。

2015年7月、防衛省は「安全保障技術研究推進制度」と称する軍事技術開発のための資金制度の募集を開始した。防衛省による大学取り込みの始まりを示すものであり、「軍産学連携」を目指す意図が明確に示されている。文科省は、一方で国以外のスポンサーからの資金流入なしには大学がやっていけない状況へと追い込みながら、他方で防衛省は大学に対し資金提供をして研究推進を申し出るのである。防衛省の2017年度の安保研究推進制度予算は、16年度の18倍、110億円にふくれあがっている。

そこに用いられる論理が、「デュアルユース」である。つまりあらゆる科学研究の成果は、民生利用と軍事利用の両者がある(デュアルユース)のだから、防衛省の研究推進と言って、それを直ちに軍事利用のためということはできない、というのである。

池内氏は言う。確かに科学研究の成果がデュアルユースだというのは、そうかも知れない。しかし、その研究資金がどこから出ているかは、明確に区別しうる。軍から研究資金が出ていると言うことは、軍事利用に手を貸すことになるのではないか。この鋭い指摘によって、15年度に109件あった大学の応募は、今年度44件に急減した。

軍産学連携を許さないために、大学人は厳しい環境の中で、戦争法に反対し、学問の自由を堅持しようとしている。