「一粒の麦」NO.246 会長エッセイ「ファン気質の話」 重村幸司

投稿日: 2016/07/23 8:44:26

ファン気質というのは可笑しくもあり悲しくもある。

40年以上前になろうか。職場の先輩に強烈なカープファンがいた。カープも今ほどファンの胸をこがすようなチームではなかった。その年も、首位からはかなり差をつけられ、この日の試合で負ければ自力優勝がなくなるという時でも先輩は「まだしゃあないよ、これからよ」と祈るような目つきで気炎を吐いた。その試合に負けた明くる日、少ししょげた風はあるが「今日から連勝すればしゃあないよ」と高らかに言った。笑えるような雰囲気ではなく「そういねえ」と相づちをうった。

その後もずっとカープ一筋であろう。今頃、満面の笑顔で鼻をふくらませ高笑いをしていることは疑いない。

単に「ファン気質」というのではなく、コーチ役をかってでるファンもいる。その人自身、70歳近くなってもソフトボールのピッチャーをやっている。ウインドミルという投法で投げるのだから相当の体力である。年齢を克服するには相応の鍛錬と勉強が必要らしい。その勉強ぶりが高じて、今ではプロ野球の選手に手紙でアドバイスを送るのである。

ピッチャーには、ボールを握る時縫い目をよく見るようにアドバイスをしたという。縫い目が風ををうけるとかすかに変化を起こすからだという。プロの選手なら当然そんなことは知っているだろうと思うが、そのアドバイスを送ったピッチャーが、その後投げる前に縫い目を見るようになったといい、しかも好調だというから「そうか、えかったねえ」というしかない。

中村剛也という球界ナンバーワンのホームランバッターには、バットを握る時の指の扱いについてアドバイスを送ったという。そのアドバイスが効いたかどうか不明だが、怪我さえなければ毎年50本前後のホームランを打つだろう。

会うたびに、このまえ○○に手紙を送ったというから驚きである。それを実践して成績があがればこれに越したことはない。そして、感謝の返事の一つでもくれば宝物になるであろう。

自分自身は、昨年は一勝もできなかったと嘆いていたが、今年もまだ投げているようだから、これも怪物といえる。西武ファンの兄貴の話である。

私のファン気質を笑う人は多い。なにしろ横浜ベイスターズのファンだからである。まず、なぜカープファンではないのか?というのと、あの弱いチームのファンでは応援のし甲斐がなかろうというものらしい。9歳のときからファンだが、56年間で優勝は一回きりである。たいがいBクラスで、見切りをつければよかろうに思うが、そうもいかないから不思議なものである。10連敗ののちに1勝すれば喜ぶのだから、ファン気質とは可笑しく悲しいものである。いつも、これから連勝すれば・・・。