「一粒の麦」NO.241号 会長エッセイ「前期高齢者のはなし」 重村幸司

2016/02/21 0:34 に 山根岩男 が投稿

  誕生日前に2通の封書が送られてきた。一通目は、介護保険料の金額と支払い方法の通知、そして保険制度のあらましだった。わずかな年金ながら、年間9万円もの保険料が記されていた。家の者が「もう旅行にも行けないね」とつぶやく。
  誕生当日に送られてきたのは、年金の支払い請求の申込み書だった。これまでの年金は「特別支給」だったのが、65才からの制度本来の適用になるからだという。
  社会制度の前期高齢者の仲間入りを通告された。 

  「老い」に抗して60才までは野球のピッチングが出来るようにと、幻の目標をもって体力作りにいそしんできた。幻というのは、チームに所属しているわけではないので、試合に参加できる環境にないからである。それでも早朝や、時間を見つけては坂道を走って下半身を鍛えた。駅の階段は必ず走って昇った。腹筋や腕立て伏せや股わりもやり、ピッチングができるよう強くしなやかな体を保つよう心がけた。
 2年前、かっての職場のチームでバッテリーを組んでいた先輩から「人が足りないので」と試合に誘われた。還暦過ぎても投げれるか試したい思いが募っていたので、万障を繰り合わせていそいそと出掛けた。
  ピッチャーは高校野球あがりの若手がいて、残念なことに内野での出場であった。試合前に先輩は、リリーフが必要な時の用心として「いちおう準備しておこうか」と受けてくれた。もともと球威や切れはなく、「走らない直球、曲がらないカーブ、落ちないナックル」で、バッターの打ち損じが頼みの投手だった。ただ制球はまずまずだった。狙ったところに行くという本当の制球ではないが、ストライクゾーンには入った。このウオームアップでも、ほとんどストライクだった。安堵した。(まだまだいけるじゃん)。
  先輩も「シニアの練習試合くらいなら投げられるなあ」とお墨付きを与えてくれた。もっとも「シニアの練習試合くらい」だから、薄いお墨付きではあったが。
  不思議に思うことがある。それは、プロ野球の歴々のOBが行なう「マスターリーグ」を観ると自分より若いはずの元選手が、走り方も投げ方もおぼつかないない。腹もせり出し、明らかにトレーニングはしてないようだ。若い頃の厳しいトレーニングに倦んで、今やいたわっているのだろうか。

  今でも幻の目標で運動をしている。目標は70才で投げられる身体だ。しかしこれまでのように坂道をダッシュすると足腰が悲鳴をあげるようになった。なるほど、競技者が引退するのは競技がうまくできなくなるからではなく、それを支えるトレーニングが出来なくなるからだと悟った。傷めないように身体と相談しながらすることにした。

  前期高齢者の仲間入りしたのだ、ますます健康第一である。自身いつも朗らかでありたいし、病気になって周りにめいわくを掛けることだけはしたくない。厳寒でも表に飛び出して運動を続けるには、幻であろうと目標が必要だ。選挙のない来年は、シニアのチームに入れて貰おう。現実の夢ならもっと確かな張りあいになるはずだ。  

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