NO.290 反骨爺のつぶやき 高村よしあつ(顧問)

投稿日: 2020/03/26 8:02:16

「新版 資本論」の学習会が、県下のあちこちで盛んになっているのは、うれしいことである。言うまでもなく、資本論の舞台となったのは、独自の資本主義的生産様式への道を真っ先に歩み始めた、イギリスであった。

いま、そのイギリスが、「EU離脱」という歴史的試練に立ち向かっている。一般には、EUは移民を制限する排外主義をとった「右傾化」を意味するものと解されているが、これに異論を唱えているのが、ブレイディみかこ氏の「労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱」(光文社新書)である。

みかこ氏は、英国南部のブライトンという労働者階級の街に、白人労働者の配偶者と20年以上にわたって住んでいる移民の1人であり、夫婦共に「労働党支持」者である。イギリスの労働者階級は、根強い「保守党嫌い」ではあるが、疎外感も強く、普段は「政治なんてファック」と嘯いているが、反撃するときは、断固として反撃する。1945年、労働党が「ゆりかごから墓場まで」の福祉政策をひっさげて登場したとき、労働者階級は、「ピープルの革命」を実現し、チャーチルの保守党を破ったのがその一例である。

みかこは氏は、2016年、国民投票によるEU離脱が、そのもう一つの例だとする。前年労働党党首となった最左派のジェレミー・コービンは、IMF主導のEUの緊縮路線に、反撃の旗を掲げ、「国立病院には閉鎖される病棟が出現し、公立学校の教員は目に見えて減り、福祉を切られて路頭に出るホームレスは増え」たEUを許せるのか、と論じた。こうして、2017年の総選挙で、労働党は30議席増の262議席となる。しかし、労働者階級の目は曇らない。労働党は、2019年総選挙でブレグジット(EUからの脱退)への態度を曖昧にしたことで、59議席を失う大敗。

みかこ氏は言う。イギリスの労働者階級は、EU離脱で経済的不平等を打ち破る「パンドラの箱」を空けたのだ、と。