NO.270 反骨爺のつぶやき 高村よしあつ

投稿日: 2018/08/30 4:17:09

キャンドル市民革命の韓国が注目されている。文大統領は、朝鮮半島の非核化と平和体制の確立を目指す米朝首脳会談を生み出し、他方で朴元淳(パク・ウオンスン)ソウル市長は、市民参加・参画の市民民主主義を確立しようとしている。

白石孝編著の「ソウルの市民民主主義」(コモンズ)は、ソウル市政が新自由主義の資本主義と対決し、市民民主主義によって対抗軸を示していると指摘し、あえて「日本の政治をかえるために」との副題を付けて出版している。

資本主義は、1980年代から、それまでのでケインズ型国家独占資本主義をなげすて、新自由主義型国家独占資本主義へと転換した。それまでの一億総中流時代ははかなく消滅し、代わって一方の側の富の集中と、他方の側の「格差と貧困」が生じた。

では、どうやってこの「格差と貧困」を解決するのか。朴市長は、新自由主義の「格差と貧困」が、「中間層の解体」によって生じたことを見抜き、市民の力を結集して市民の生活を守るために、トータルに新自由主義と対決しようとしている。言い換えると「税制と社会保障の一体改革」である。市民の暮らしを守るためには財源が必要であり、そのために「応能負担の原則」にもとづき、所得税の累進課税強化、法人税、富裕層の課税強化が必要となる。その財源を使って、つまみ食いの福祉ではなく、すべての人を対象にした教育、住宅、医療、介護、保育の無償化を実現することで格差と貧困を解決しようという「普遍的福祉」を目指している。

「日本の政治を変えるために」との副題も、日本では富を収奪しているのは新自由主義の問題意識が弱く、内部留保を蓄積する資本主義から富を取り戻し、それを使ってすべての人々の福祉を守るという、新自由主義と対決するトータルな「格差と貧困」対策が存在しないのではないか、との問題意識が存在するからである。