NO.269 反骨爺のつぶやき 高村よしあつ

投稿日: 2018/06/28 5:29:39

アベノミクスの「第1の柱」は、「大胆な金融政策」によるデフレからの脱却であった。2013年4月に始まった「異次元金融緩和」は、日銀が大量の国債を市場から買って大量のマネーを供給し、「2年程度」で物価上昇率を2%に引き上げ、経済を好循環に転化する、というものであった。

それから5年、黒田日銀総裁は6回も「2%」も延期したまま任期満了となり、2018年4月再選後初めての会合で、日銀はついに「2%」の実施時期を削除してしまい、デフレ脱却もできないまま、これまでの「異次元金融緩和」をズルズル継続することになった。

アメリカや欧州の中央銀行は、2008年のリーマンショックで採用した金融緩和をすでに「出口」へと転換しつつあるにもかかわらず、なぜ日本では「出口」に向かう見通しさえ示せないのか。そもそも日銀はデフレの原因を誤っているからである。日本では、貨幣の不足がデフレの原因となっているのではなく、労働者派遣の自由化により、実質賃金の切り下げが原因となっているからである。「異次元金融緩和」は、マネーを無制限に市場に垂れ流したのみであって、もはや金融市場の危機に対応する能力を失い、金融緩和も、金融引き締めもできない状況になっている。

現代資本主義は、新自由主義型国家独占資本主義である。「モノづくり」よりも、「マネー・ゲーム」に熱中する新自由主義の「カジノ資本主義」では、金融市場が巨大に発展し、常に崩壊の危機にさらされている。それに対応するのが、政府と日銀であるが、いずれも、欧米にみられる実質賃金の引き上げに目をつむって、金融緩和に走るのみで、「日本経済の時限爆弾」を抱え込んでしまったのである。

私たちが、実質賃金の引き上げを要求するのは、日本経済の正常化をめざし、異次元緩和から脱出し、「出口」に向かうためであるのだ。