NO.245 反骨爺のつぶやき 高村よしあつ(常任理事)

投稿日: 2016/06/30 8:33:02

護憲派の泰斗・樋口陽一氏は、立憲主義とは「法の支配」(「『憲法改正』の真実」)であると言っている。国の最高法規である憲法という「法」によって、国家権力を縛るのが立憲主義である。憲法は、この立憲主義を「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務がある」(99条))と、明記している。

戦争法の強行採決を機に、戦争法廃止と立憲主義の回復を求める2000万統一署名が大きな力となり、一人区である参議院32選挙区の全てにおいて野党統一候補が実現し、いよいよアベ政権は追い詰められているが、彼らは2012年4月公表の改憲草案をひっさげ、参院選に臨もうとしている。

自民党改憲草案には、「緊急事態の宣言」の規定が盛り込まれている。内閣総理大臣が「緊急事態」を宣言したときは、立法権は内閣のものとなり、支出も自由になし得ることになり、予算承認・拒否権という「国の財布のひも」も首相が預かることになる。しかも、草案では、この緊急事態も含めて、「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」とされているのである。

樋口氏は「一番大きな問題は、そもそも国家緊急権という考え方が、立憲主義との非常に厳しい緊張関係にあるということです。へたをすれば、この条項はナチスを台頭させたワイマール憲法の二の舞を引き起こします」と警告している。かって麻生太郎副総理は、「気づいたらワイマール憲法はナチス憲法に変わっていた」と指摘し、「あの手口に学んだらどうかね」と語ったが、緊急事態の宣言は、立憲主義の破壊を憲法上の規定にすることによって、ナチスの手口を学ぼうとしているのである。

しかも、緊急事態を宣言しうる事案として、「地震等による大規模な自然災害」があげられている。東日本大震災、今回の九州の連続震災はいずれも該当することになり、いったん宣言されれば、未来永劫にそれが継続することになる。

参院選の最大の争点である立憲主義の回復は、安倍政権の改憲構想との対決となって示されている。