一粒の麦NO297 反骨爺のつぶやき

 アベ政治の「継承」を掲げて登場した菅政権であるが、その通りに立憲主義を否定する「継承」をなしている。

通常国会閉会後、野党は7月31日、共同して憲法53条にもとづき臨時国会の招集を要求したが、アベ政権はこれを無視し、その後誕生した菅政権も知らぬ顔。所信表明演説をする前に、菅政権は、10月1日から任期が始まる日本学術会議の新会員について、会員候補のうち、6人を任命しないという政治介入によって、日本全体を火の車に変えてしまった。

 憲法23条は、学問の自由を保障している。旧憲法にはこの規定がなかったために、国家権力は、戦争目的のために、学問を強力に統制し、政治の奴隷に変えてしまった。その反省のうえに、学問の自由が憲法上規定され、1949年科学が「平和国家の基礎」であることの確信のもとに日本学術会議が誕生したのである。菅首相は、憲法23条を無視することで、立憲主義を否定している。 

 それだけではない。菅政権は、憲法15条1項の公務員の選定・罷免権を持ち出し、政権には学術会議の選定・罷免権があるという、驚くべき立憲主義否定の主張をなしている。

 憲法15条は、日本国憲法の基本原理である国民主権と切りはなして理解することは出来ない。国民主権のもとで、「国政は、国民の厳粛な信託によるもの」(全文)であり、国民の代表者である国会議員は、国民によって選出され、国民の意思に反する行動をするときには、国民はこれを罷免することが出来るというのが、15条1項の趣旨である。同じ趣旨から、憲法79条により、国民は最高裁判事の罷免権を有することを規定している。

だから15条1項は、「国民固有の権利」として公務員の選定・罷免権を規定しているのである。歴代自民党政権は、自らの悪行を免れるために、国民の罷免権を立法化することをサボリ続けてきたばかりか、それを根拠に学問への政治介入をしようとする立憲主義否定を企む。断じて許すことは出来ない。