哲学講座「時代を哲学する」第6講「A Iと貧困」

投稿日: 2019/05/23 4:31:13

今回の講座は、「A Iと貧困」です。A I:人工知能は、生活のあらゆる面で役に立ち、人間の生活を変えてくれるであろうと言われています。企業で人工知能が導入されることによって、これまでの人間がしていた仕事を機械で代替えすることが可能となり、これによって人員不足の解消や人件費の削減、また、過酷な労働環境で問題となっている、きつい・汚い・危険といった「3K」の仕事を機械が対応することでリスクの軽減につながるといえます。一方裏を返せば、私たち人間の仕事がなくなることになり、「失業者」があふれ、「格差と貧困」をより一層大きくさせることを、心配する報道も出ています。

講座での解説では、1980年代からの新自由主義が、中間層を没落させ、貧困層を増加させ、一挙に「格差と貧困」が拡大させており、オフィスのOA化から、IT革命により、仕事のマニュアル化、ネットワーク化することで、一気に使い捨てることができる非正規雇用が増加し、全賃金労働者の4割を占めるようになっている。そこで、「A I革命」は、大量の失業を生み出すのかということですが、講座では、資本主義は19世紀後半の産業革命以来、蒸気機関、パソコン、インターネットなどで、何度かの産業革命を繰り返しながら、資本の総量を増大させ、全体としては労働者階級の人口を増やしてきた。日本でも、IT革命により、中間層は崩壊したものの、新しい仕事は増え、雇用者数は1500万人近く増えた。つまり、産業革命は、新しい労働手段(インターネットとか)によって、新しい雇用を生み出し、労働人口を増大しつつ、相対的過剰人口(失業者)をつくり出してきた。よって、AIは、これまでの産業革命と同様に、新たな雇用を生み出すものであって、単純に大量の失業者を生み出し、仕事を消滅させるとはいえないと解説されました。

しかし、AIによって、貧富の対立と「格差と貧困」はますます激しくなり、階級間の矛盾は激化し、AIによる階級闘争の激化は資本主義の限界を打ち破り、未来社会を展望するところまで発展する可能性を持っている。つまり、AIも人間がつくり出した「労働手段」であり、AI革命は新しい「経済的諸時代」をつくり出す、そして、未来社会論で考えると、AIも、より高度に発達した資本主義をささえる生産手段であり、「生産手段の社会化」による未来社会「自由の国(時間)」、つまり、人間が何でも自由にできる時間を持つような展望となるためのものであると解説されました。

結局のところ、AI革命が大量の失業者を出すとの議論は、現在の階級闘争の発展が未来のAI時代の階級闘争をつくり出すという観点が欠落していることを特徴としているために、その意味で、日本における貧困をめぐる階級闘争の分析が必要であると解説されました。

アベノミクスの貧困対策はトリクルダウン論であり、大企業が儲かればそれが低所得者にも滴り落ちるというフェイク論、大企業の首切りを放置し、社会保障も一方的に切り捨て、アベ政権の7年間で社会保障費を4.3兆円も削減して、さらに貧困が広がる。また、消費税は大企業の減税として8割が穴埋めとなり、所得税率も最高税率70%→45%へ、安倍内閣は、大企業と富裕層に応分の負担を求め、それを財源としての「所得再配分」どころか「格差と貧困」を拡大するものとして許せるべきことではない悪政を行っていると解説され、貧困対策を実現するには、革新統一戦線を結成して、政治を革新するしかないと説明されました。

戦争法反対以来、市民と野党の共闘は大きく前進し、さらに玉城デニー知事誕生によって「『オール沖縄』に学べ」に気運が高まり、沖縄県知事選を機に野党間の共闘を強め、新しい統一戦線の結成にむけて前進しょうとしている。新しい統一戦線が結成されれば、AI革命による失業問題にも、貧困打開の階級闘争として取り組むことができると結ばれました。

意見の違いがあっても、暴力沙汰に及ぶことなく、すべては対話で解決されて、助け合って、この社会を生きています。乳児は、母親からの呼びかけに応答する対話をつうじて、人間らしくなり、人間として成長してゆきます。