自己管理によるマネジメントへの変革

目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに代えることにある。

しかし、自己管理によるマネジメントを実現するには、その考えを正しく望ましいものとして認めるのみならず、そのための道具立てが必要である。これまでの考え方や仕事の仕方について思い切った変革が必要である。

自らの仕事を管理するには、自らの目標を知っているだけでは十分ではない。自らの仕事ぶりとその成果を、目標に照らして測定することが必要である。したがって、事業のあらゆる領域について、明確な共通の評価基準を与えられることが必要である。

それらの評価基準は、定量的でなくとも、緻密でなくとも良い。しかし、単純で明確、かつ合理的であることが不可欠である。

また、自らの仕事ぶりを測定されるための情報を、早く得ることが必要である。しかもそれらの情報は、上司からではなく本人に直接伝えられることが肝要である。情報は自己管理の道具であって、上からの管理の道具にしてはならない。

マネジメントたる者は自らの成果について全面的に責任を持つ。成果をあげるための仕事は、彼ら自らのみが管理する。人は自らの仕事について情報をもつとき、初めてその成果について全責任を負うことができる。

前のセクションで述べられたように、上位組織の目標設定に参画し、自らの果たすべき貢献を自らの目標と設定できたならば、組織に属する一人ひとりの目標は全体の成果に結びつくものになっているはずです。

また、目標に向かって進んでいることが測定できるように、その評価基準をあらかじめ定めておくことが必要です。評価基準について、上記のようにドラッカーは、必ずしも定量的でなくとも明確であることが必要だと言っています。例えば「お客様との会話の増減」とか「仕事の相手からありがとうと言われた回数」というものでも明確であると言えそうです。

次は実行の段階に入り、一人ひとりが自らの目標の進み具合を管理していく「自己管理」になります。目標と評価基準があらかじめ決まっているからこそ、自己管理ができるようになります。

ここで一つ注意することが、評価基準に関する情報の入手経路で、これは上司からもたらされるのではなく直接本人が得られるように仕組みを作っておくようにすべきとのアドバイスです。

上司から評価に関する情報を伝えるようにすると、上司側がその情報を渡すときに評価をしてしまいます。

そうすると渡される側は評価つきの情報を渡されるようになって、自らの仕事で最高の成果をあげることよりも評価を上げることを優先してしまうようになり、成果のためよりも上司のために仕事をしているという士気の低い状態に陥ってしまうということなのです。

2013/7/12