経営管理者育成の第一の原則は、マネジメント層全体の水準の向上を図らなければならないということである。
第二の原則は、明日を視野に入れたものでなければならないということである。
経営管理者を育成するために今日一般に使われている手法では役に立たない。前述した後任候補の考え方だけが不適切なのではない。
多くの企業でお気に入りの手法となっている定期異動も適切ではない。定期異動は通常二つの形のいずれかをとる。一つは、特定の機能に習熟した者に短期間他の機能を経験させる、通常、次から次へといくつかの機能を経験させる。もう一つは、マネジメントの仕事を行っていくうえで必要でありながら十分知識のない他の機能について、訓練のための仕事につかせる。
しかし、事業にとって必要とされる者は、経理をかじった技術者ではない。事業をマネジメントする能力をもつ技術者である。また、何人にたいしても、本当の仕事ではない仕事、すなわち本当の成果を求めない仕事を与えてはならない。
経営管理者の育成は、あらゆる経営管理者を対象としなければならない。それは、あらゆる経営管理者に対し、成長と自己開発を促すものである。
前のセクションで、少数の優れたマネージャーを作り明日を託すというやり方は間違っていると述べた後、このセクションで育成の原則について触れています。
その原則は、①すべてのマネージャーを対象とすること、②明日のニーズに焦点を合わせたものであること、の二点です。
育成の方法は、次のセクションで説明されるのですが、その前に「定期異動によって人材を育成する」という方法は、適切ではないとしているのです。それは、機械的なジョブローテーションでは、腰を据えて幅広い経験と知識を蓄積することにはならず、聞きかじったような中途半端な知識をもつ人をたくさんつくるだけになってしまうからです。
また、訓練・研修のために仕事を経験させるという人事異動も誤っているとしています。それは成果を求めない仕事をやらせることになり、そのような仕事に人は責任をもたないし、真剣にならないし、したがって本人にとって意味のある経験にならないからだと思います。
2013/8/6