しかし、プロセスの段階ごとに適切に組織した機能別組織であっても、事業そのものが必要とする組織構造上の課題に応えるものではない。なぜならば、機能別組織は、事業全体の成果に焦点を合わせることがきわめて困難だからである。
機能別組織の経営管理者は、自らの部門の機能を最も重要と考え、その確立に力を入れがちである。自らの機能の領域を広げたいとする欲求は、よりよい仕事をしたいという機能別組織の経営管理者の賞賛すべき欲求の表れでもあるからである。
機能別組織のもう一つの弱みは、機能についての目標が設定しにくく、成果が測定しにくいことにある。これは、機能というものが事業の一部の側面にしか関わりを持たず、業績に直接の関わりを持ちえないためである。
一般に機能別組織の目標は事業の成功という観点ではなく、専門家としての基準に沿って設定される。それらの目標は、間違ったことを強調し、報奨する。
さらに、機能別組織は成果を上げる能力について、経営管理者を評価することができない。
機能別組織は、事業全体のプロセスの一部を切り出してその活動を専門に行う部署をたくさんつくります。したがって、一人ひとりの目の前にある仕事は、複数の製品やサービスのほんの一部を形づくる活動を繰り返し行うようなものになります。
そのような組織で、その活動に責任をもつマネージャーは、いかに自分のセクションの仕事を効率よく行うかという部分最適の考え方に陥り、他部署の非効率が起きていても気にしないという考え方になっていってしまいます。
これが、上記でいう「事業全体の成果に焦点を合わせづらい」ということです。
例えば、企業内の情報システム部門が、いかに効率よく、高機能で低価格なシステムを構築・管理できるのかが至上命題(評価基準)となってしまい、事業全体の成果を生む最前線の現場に対していかに適切な道具(システム)を提供するかという視点が抜け落ちてしまうというようなことが起きがちです。
ドラッカーは「このような弊害を避ける有効な対策はない」と断定していますから、機能別組織はどうしてもそうせざるを得ない場合を除いて、連邦型組織を採用すべきだと主張しているのです。
2013/8/15