集団と個人

人は集団で働く。働くために集団を形成する。そして集団は、直ちになすべき仕事に焦点を合わせる。したがって集団内の関係が仕事に影響を与える。逆に、仕事が集団内の人間関係に影響を及ぼす。

しかしその間も、一人ひとりの人は個人であり続ける。したがって仕事のための組織においては、集団と個人の調和が重要な意味をもつ。

ということは、個人の強み、主体性、責任、卓越性が、集団全体の強みと仕事ぶりの源泉となるよう仕事を組織する必要があることを意味する。これは組織に関わる第一の原則である。

自らの成長が自分自身や仲間にとって脅威となる状況は最悪である。そのような状況をもたらすことは、エンジニアリングの失敗である。

最後に、人の「啓発」とは成長である。成長は常に内から行われる。したがって、仕事は人の成長を促すとともに、その方向づけを行うべきものである。さもなければ、仕事は人それぞれの特質を発揮させることはできない。

働く人の動機づけがマネジメントが直面する緊急課題だと述べた後、このセクションでは、集団と個人を調和させることが重要だということについて述べています。

集団は何らかの目的を持って構成されるため、その目的を達成するための仕事はどのようなものであるかを直ちに考える必要があります。しかし、それらの仕事は人に割り当てなくてはなりません。

集団に属する一人ひとりの人にそれらの仕事を割り当てるときに、問題が起きます。

そもそもその仕事は人がなし得る仕事なのかという問題がクリアされた後も、誰がどの仕事を担当するのか、それはそれぞれ違う強みをもった人に適切に割り当てられているか、ということを常に考えなければなりません。それが集団と個人との調和という意味だと思います。

動機づけという視点でこのセクションを読むと「成長」がそれの答えであるように読み取れます。

個人の視点から仕事を見たときに、その仕事によって成長できるということは、その仕事を行うあるいはその仕事に挑戦する強い動機づけになると考えられます。上記の最後の段落のように「仕事は人の成長を促す」ように組み立てなくてはならないということです。

このセクションには、次のような印象的な言葉があります。

「人の本性は、最低ではなく最高の仕事ぶりを目標とすることを要求する」

個人としての時間を組織に提供して賃金に変換するだけの仕事では、飽きてしまいます。自らの仕事ぶりが自分の満足するものであってそれを正当に評価されれば、もっと良い仕事を成し遂げようという意欲を生むということではないでしょうか。

2013/9/8