しかし、知識や概念の教育だけでは、経営管理者は明日の課題を果たすことはできない。
新しい技術のもとでは、意思決定が事業に与える影響や、その対象とする時間的な広がり、そのもたらすリスクがあまりに大きくなるために、経営管理者たる者は、自らの利益よりも企業全体の利益を重視することが求められる。
その意思決定が企業内の他の人に与える影響が決定的と言えるほど大きくなるため、経営管理者たる者は、当面の都合に振り回されることなく、哲学を持つことが求められる。
つまるところ、いかなる一般教養を有し、マネジメントについていかなる専門教育を受けていようとも、経営管理者にとって決定的に重要な者は、教育やスキルではない。それは真摯さである。
第13章の「マネジメントの適性」、第27章「経営管理者と部下との関係」でも取り上げられたように、これからのマネージャーにとっても「真摯さ」が最も基本的な資質であることは変わりないということを、改めて確認しています。
上記のように、新たな技術が社会に浸透していくと、これまでのマネージャーよりもより責任が重くなり、その意思決定の影響範囲が大きくなるため、以前にも増して真摯さに対する要求は大きくなるのだとしたものです。
本セクションでドラッカーは「社会そのものが経営管理者に対し、大きな責任を課すようになる。」と述べ、マネージャーの意思決定の影響範囲は、組織内のみならず組織を取り巻く社会に及ぶと考えたのです。
2013/11/1