人事管理論が不毛な原因

人事管理論が不毛となっている主たる原因は、三つの間違ったコンセプトにある。

第一に、人事管理論は人は働きたがらないという考えを前提としている。したがって、当然のこととして仕事以外の満足に重点を置く。

第二に、人事管理論は、人と仕事のマネジメントを、マネジメントの仕事ではなく専門職の仕事にしている。これこそスタッフ部門としての人事部やスタッフのコンセプトに伴う混乱の典型例である。

第三に、人事管理論は、一般に人事の仕事を消火活動の仕事にしている。すなわち、人事の仕事を本来円滑であるべき生産活動を妨げる問題や頭痛の種を処理すべきものと見る。事実、今日では人事部長の多くが、ほとんど意識せずにではあるが、紛争の処理を仕事にしていると言ってよい。

IBM物語が明らかにしているように、人と仕事のマネジメントのためには、積極的な行動に焦点を合わせ、強みと調和を基盤とすることが必要である。

第20章で述べられたように、人は元来新しいものに貪欲で、仕事をすることで成長を求めるものであるとしていますから、上記の第一の原因であげられている前提はドラッカーの主張と正反対です。

第二の原因については少しわかりづらいですが、本来人事部門は現場のマネージャーを支援することによって、事業の成果に貢献することが必要とされているはずなのに、人事の専門家としてなにかそれ単体で成果を挙げられるかのように仕事をしているという勘違いを指摘しているのだと思います。

そのため、「現場のマネージャーが自己防衛のために、人事部の仕事を人と仕事のマネジメントに関わりのない雑事に閉じ込める」しかなくなっていると説いています。

2013/9/14