人には他の資源にはない資質がある。すなわち、調整し、統合し、判断し、想像する能力である。まったくのところ、人が他の資源に勝る能力はそれらの能力だけである。物理的な腕力にせよ、手先の技能にせよ、あるいは知覚する能力にせよ、他の能力については機械の方がはるかに優れた仕事をする。
われわれは働く人を人としてみる必要がある。すなわち人を精神的、社会的な存在として認識し、その特質にあった仕事の組織の仕方を考えるというアプローチが必要である。人格をもつ存在としての人を利用できるのは本人だけである。働くか働かないかさえ本人が完全な支配力を持っている。
したがって、人的資源については常に動機づけが必要となる。
今日欧米では、工業労働者にとって伝統的な動機づけの道具だった「恐怖」というものがほとんど消滅してしまった。われわれは恐怖に変わるべき積極的な動機づけを生み出す必要がある。これこそ今日のマネジメントが直面する、緊急の中心的課題である。
前のセクションで挙げられた第一の問題点である「資源としての人の特質とは何かを考える必要がある」についての考察です。
他の資源と比較して、勝る点、劣る点を理解し、当然マネジメントとしては勝る点を活かして人を使い、その能力を十分に発揮してもらって成果を上げるように仕事を組織しなければなりません。
しかし、他の資源よりも勝る能力にしてもそれを発揮するか否かは、すべて本人が支配権を持っていることを忘れてはならないとしているのです。
かつては恐怖により組織が人を支配して強制的にその能力を発揮させていました。しかし富の増大によりその支配力は既に消滅し、能力を発揮するかどうかの選択権は一人ひとりの人に移っています。
したがって、恐怖に変わる動機づけ要因を生み出すことがマネジメントに求められているとしているのです。
2013/9/7