組織論はビジネススクールにおいて、マネジメントなる科目の中心に位置している。
経営管理者のほとんど、特に大企業の経営管理者は、組織化の仕方によって仕事が左右されることを身をもって知っている。だが、実際にマネジメントに携わっている経営管理者は、組織論の学者のいうことが理解できない。しかも組織論の学者の方も経営管理者のいうことが理解できない。経営管理者はいかなる構造が必要かを知ろうとする。組織論の学者は構造の建築方法を語る。
組織はそれ自体が目的ではなく、事業の活動と成果という二つの目的のための手段である。組織の構造も手段である。組織の構造を間違えるならば、事業活動を著しく阻害し、台無しにする。したがって、組織の分析は、事業そのものの分析から入ることが必要である。最初に問うべきは、われわれの事業の目標は何か、何でなければならないかである。
事業目標の達成を可能にするために、いかなる組織の構造が必要かを知る方法は三つある。すなわち、活動分析、意思決定分析、関係分析である。
組織を論ずること、すなわちいかにして組織を作るかということについて研究することをドラッカーは否定したいわけではありません。それは重要なことだと言っています。
しかし、実務の最前線に立つマネージャーが知りたいのは、自分の事業にとってどんな構造の組織が適切なのかということであるため、組織論の学者とは話が噛み合わず、混乱することになると、次のような例で解説しています。
「言い換えれば、経営管理者はいかなる高速道路をつくるべきか、どこからどこまでつくるべきかを知ろうとするのに対し、組織論の学者は、桁橋式と吊橋式のそれぞれの利点と限界について論ずる。いずれも道路建設の問題である。いずれも検討しなければならない。しかし、どこに道路を建設するべきかという問いに対し、高速道路のタイプ別強度について議論していては、混乱が起こって当然である。」
重要なことは、後半の段落で述べている「組織は事業行うための手段である」ことを見失わないことなのです。
学者は組織研究そのものを事業としている専門家ですが、実務のマネージャーは自分の事業の専門家であって組織構造の専門家ではないのだから、マネージャーはその立場の違いを理解して組織論を見るべきだとしているのだと思います。
最後の段落で述べている三つの方法について、次のセクションから順番に解説されています。
2013/8/8