新しい手法は、OR(オペレーションズ・リサーチ)というかなり混乱を招く名のもとに導入された。実はそれらは、オペレーションズでもリサーチでもない。体系的、論理的、数学的な分析と総合のための手法である。
数理分析、記号論理学、数理的情報理論、ゲーム理論、確率論などのOR手法は、問題の理解に使うことはできない。また最善の解決策を決定することもできない。この手法は、二つの中間的な段階、すなわち問題の分析と複数の解決案の作成において大きな力を発揮する。
もちろん正しく使わなければ、間違った意思決定の原因となる。さらには事業全体を犠牲にし、小さな分野や機能に関わる問題の解決、いわゆる「部分最適化」に濫用されやすい。
意思決定とは、問題を理解し、分析し、判断し、リスクを冒し、成果をあげる行動にいたるまでのプロセスである。このことを理解しないならば、新しい手法に助けられるどころか、魔法使いの未熟な弟子のように自ら魔法の犠牲となる。
ORをwikiで調べると、「複雑なシステムの分析などにおける意思決定を支援し、また意思決定の根拠を他人に説明するためのツール」とされています。解説によると、軍事作戦とその効果についての因果関係を予測し、より効果の高い戦略や戦術の選択をできるように支援する手法のようです。
このノウハウを、事業の意思決定に応用するようになったものと思われます。
ドラッカーは、このORという分析手法について、誤った使い方をするなと言う注意を与えています。この手法は意思決定の五つのプロセスのうち問題の分析と複数の解決案の作成の段階にだけ使うべきだとしたのです。
それは「経営管理者の視野や想像力の及ばない領域を含め、事業そのものや事業を取り巻く環境の変化のそこにあるパターンを明らかにする。」というように、能力の異なるマネージャーが漫然と考えるよりもより多くの情報を扱い、分析結果が正しくなる点を評価しています。
ただ、手法の新しさや結果の正しさ故に、その道具をどう使うかということに心を囚われ、部分最適に陥る危険性も指摘しています。
あくまで事業全体にとってよい影響をもたらす意思決定をすることが目的であり、新しい道具を使うこと自体が目的にならないように気をつけるように注意を促しているのです。
2013/10/26