1954年の春、T・V・ハウザーがあとを継いだ。そして今日、再びシアーズは新しい問題と新しい機会を目の前にしている。
かつてシアーズの市場を変えた自動車が、再びシアーズの市場を変えようとしつつあるかに見える。今日あらゆる都市において、自動車が買い物客にとって急速に、助けではなく面倒の種になりつつある。
しかも、シアーズの典型的な顧客である主婦のますます多くが勤めに出るようになり、シアーズの営業時間には働いているようになっている。
もしこの見方が正しいならば、シアーズはその歴史において既に二度にわたって行ったと同じように、市場と顧客について再び徹底的に分析しなければならない。シアーズは新しい目標を定めなければならない。
言い換えるならば、シアーズは再び、自らの事業は何か、市場はどこにあるか、どのようなイノベーションが必要かについて、徹底的に深く考える必要に迫られている。
本書が1954年発行ですから、当時のシアーズの最新情報が記されているということになります。
前回のイノベーションが1920年代の半ばから1930年代にかけてですから、それから20年ほどが経過して、再び顧客の状況が変わっていることに気付かなければならないとしています。
たくさんの企業を見てきたドラッカーからするとその一企業であるシアーズにずいぶん肩入れしているような気がしますが、これから述べる「事業のマネジメント」の参考事例として、最適だとして紹介されたのでしょう。
さて、シアーズ物語はこれで終わりです。つぎからは、いよいよ名言がたくさん出てくる第5章「事業とは何か」に入ります。
2013/5/25