いかなる組織といえども、そのトップマネジメントを超えて優れたものとはなりえない。トップを超えて大きな構想を持つことも、卓越した仕事ぶりを示すこともできない。
企業はその中央において、第一に統治の機関を必要とし、第二に評価と監査機関を必要とする。企業の仕事、成果、文化は、トップを構成するそれら二つの機関の質に依存する。
しばらく前、私は産業界のある大物を主賓とする社長たちの夕食会に出席した。主賓は小さな事業を大企業に育て上げ、一年ほど前、会長に退いた人だった。夕食が終わって思い出話を始めたが、やがて自分の後継者について話しだした。私は、その人の語る新社長の仕事なるものをメモした。「私の最大の貢献は、この人を社長に選んだことだ」と話が結ばれたとき、私の手元には、CEOの仕事と責任について、次のようなリストができあがっていた。
CEOは事業を検討する。全体の目標を設定する。目標を達成するために必要な意思決定を行う。それを組織全体に理解させる。経営管理者に対し事業を全体としてみるよう教え、全体の目標から自分たちの目標を導きだすことを助ける。彼らの仕事ぶりと成果を評価する。
CEOはマネジメントの上層の人事について決定を行う。下位のマネジメントにいたるまで経営管理者の育成が行われるようにする。組織の構造について基本的な決定を行う。製品別の事業部門と機能別の部門との関係を調整する。部門間の対立を仲裁し、個人的な不和を防止し修正する。
緊急時には自ら指揮を執る。投資計画と資金調達の決定を行う。株主総会での答弁にたつ。月一回の取締役会の次第を決め、報告し質問に答える。さらに新社長は、アメリカとカナダにある52の工場を一つずつ訪問している。
これを聞いていたある社長が質問した。「ところで、お宅の新社長は頭と手をいくつもっているのですか。」すでに私のメモは41にもなっていた。
中間管理職やマネージャーにとって、トップの仕事や人事についてはあまり自らのこととして実感できないですが、第14章はCEOという統治機構と取締役会という監査機関について、どうあるべきかを解説しています。
企業は社長の器を超えて大きくならない。企業が大きくなるためには社長自身が成長しなくてはならない。というのは、よく聞く話で、ドラッカーも同じことを言っています。
上記のある引退した社長の夕食会の例は、トップマネジメントの仕事を列挙するのに役立ちます。しかし、これを一人でできる新社長はスーパーマンです。ドラッカーは、「スーパーマンを期待してはならない。その出現は稀であり、あてにできないからだ」と第13章の冒頭でも述べています。
そしてこの後のセクションで述べられるように、こんなにたくさんの仕事を一人でやるのは無理だ、チームで行わなくてはならないと繋がっていきます。
2013/7/29