企業は中企業から大企業へと徐々に成長するのではない。企業の規模は連続的な変化の問題として扱うことはできず、非連続の現象として扱わなくてはならない。したがって成長に成功するための要件は、マネジメントが自らの姿勢と行動を大胆に変える能力にある。
企業が成長すると、トップマネジメントの仕事は新しい時間的次元に移行する。すなわち、事業が大きくなるほど長い将来を考えて行動しなければならなくなる。事業が大きくなれば、目標の実現のための段階よりも、目標の設定そのものにより多くの関心を向けなければならない。
成長はトップマネジメントに対し、常に新しい能力を要求する。彼らの機能が、もはや工場や販売店で何が行われているかを把握することではなくなっていることを認識するよう要求する。成長に伴う問題が、現場管理者や従業員とコミュニケーションを図ることによっては解決できないことを認識しなければならない。
問題は、トップマネジメントだけではない。成長企業ではミドルマネジメントや現業のマネジメントも、同じように変化することが必要である。そして、それもまた実際には難しい。
小企業➡中企業➡大企業➡巨大企業と成長を遂げる場合、それぞれの段階はトップマネジメントの仕事も組織構造も別のものを要求します。しかしその成長はゆっくりと進むので、企業の中にいる人たちは、次の段階に移行すべき時期がわかりにくいのです。
成長に伴ってさまざまな問題が発生してきても、その都度問題解決を行って、少しずつ変化して対応できるレベルであれば、まだ同じ企業規模にあるといえます。少しずつ変化する、すなわち小手先の修正では対応できなくなっていることに気づかず、従来と同じようにコミュニケーションを増やす(会議を増やす)ようなことで解決を図ろうとし、どんどんマネジメントの仕事量が増えているのに、解決できていないことに気づかないということが起き得ます。
ドラッカーが「ほとんどの場合、企業がそれまでの組織構造を超えて成長してしまったことを認識するのは、偶然によってである。」と述べているように、それに気づくための何らかの事件が必要な場合が多いようです。 次のようなジョンソン&ジョンソンの例を挙げています。「ある製品に問題が起き、社長が対策のための会議を開こうとして直接の関係者全員を集めたところ、27人も集まった。これを見て社長は、マネジメントの組織に根本的な欠陥があることを知り、一人CEO体制ではもはややっていけないことを認識した。」
この例にしても、それが事件だと社長が認識したからこその変化だったのでしょうが、じわじわと人数が増えていった(前回は25人だった)のでは、その変化のきっかけはつかめなかったかもしれません。
つまり、企業がいかなる規模に達しているかを認識するための適切な手段がないという問題があるということがわかります。
2013/8/31