生産性に対し重大な影響を及ぼす要因の中には、目に見えるコストの数字では決して表せないものがある。
第一に、時間である。それは人がもつ最も消えやすい資源である。人にせよ機械にせよ、時間を継続して利用できる場合は、生産性は高い。逆に仕事を過密化させることほど非生産的なことはない。
第二に、同じ資源を使っても製品の組み合わせを変えると生産性に違いがでる。製品の組み合わせ、すなわち製品ミックスの価値は、生産に要する資源やエネルギーには比例しない。
第三に、プロセスミックスなるものがある。部品の内製と外注の違い、自社ブランドにして自社販売網で売ることと卸売業者のブランドをつけて売ってもらうことの違いがある。
第四に、生産性は企業の組織や活動のバランスによって重大な影響を受ける。マーケティングに力を入れるべきときに、トップマネジメントが自らの出身部門に気を取られていたのでは全体の生産性が下がる。その結果、一般従業員の労働時間あたりの生産性低下などよりも深刻な事態を招くことになる。
生産性を数値で求める場合には、付加価値とコストとの比較で表現することが多いのですが、ここでドラッカーが述べているのは、その数字だけを見ていたのでは、するべきことを見誤る可能性があるので注意せよということだと思います。
コストには直接費と間接費があるし、間接費にも「生産的な間接費と寄生的な間接費」がある。寄生的な間接費とは、「組織内の摩擦によって発生し、かつ自ら発生させ、何ら生産性に寄与せず、むしろ生産性を阻害する人たちに関わるコスト」としています。
しかも、コストを直接測定できて管理できるとしても、上記に挙げた四つの要素のように数字で表せないものによって生産性は大きく左右されるので、結果としての数字だけを見ていては、必要な施策を打つことができないとしているのです。
2013/5/31