機能別の専門家が、そのスキルにおいて高度の水準に達し、国で一番の石工になるべく全力を尽くすことは絶対的に必要である。スキルにおいて高度の水準にない仕事は真摯さに欠ける。そのようなものは人を堕落させる。その下で働く人を堕落させる。
「プロとしての人事管理」「最新の工場管理」「科学的な市場調査」「最新の経理システム」「完全なエンジニアリング」を行うことは、必ず奨励されるべきものである。
しかし機能別の専門化した仕事において、専門的なスキルを追求することには危険が伴う。ものの見方や努力を事業の目標からそらすおそれがある。機能別の仕事それ自体が目的となる。
機能別部門の経営管理者がもつ専門的な能力における追求心は、企業全体の目標とのバランスが失われるならば、強力な遠心力となって組織を分解させる方向に働く。それぞれがそれぞれの分野にしか関心を持たず、それぞれの分野を聖域として守ろうとする。
マネージャーを誤って方向付けする要因の一つ目が、このセクションで説明している「仕事が専門化していること」です。
「国で一番の石工」とは、「同じ仕事をしている三人の石工に何をしているのかを問い、「これで食べている」「国で一番の仕事をしている」「教会を建てている」という別々の答えをした」という話にでてくる第二の男を指しています。
組織で仕事をする、チームで仕事をするという場面において、一人ひとりは何らかの役割を負っているはずで、その役割においては最も優れた能力を発揮することが期待されているのですから、期待されている役割の専門家として成果を出していくように努力することがそのマネージャーが第一に追うべき責任です。
ただ、組織が大きくなればなるほど自分(自分たち)の役割と事業全体の成果との距離が遠くなり、全体の成果のうちどの部分を担当しているのかが見えづらくなってきます。
組織の各部門がマネージャーの目の届く範囲の「個別最適」だけを追求するようになると、事業の「全体最適」は進まなくなってしまうということと同じです。
マネージャーは、自部門の専門能力を発揮すると同時に、常に事業全体の目標と自部門の成果とのバランスをとって行動することが求められています。
2013/7/7