CEOの一人体制について疑問を抱くのが当然であることは、特に今日の大企業における深刻な危機から明らかである。もはや一人のCEOではなすべき意思決定もなしえない。
大企業のCEOは、企業の存続に影響をもたらす最も基本的な決定を、1ページに要約した稟議書に基づいて承認している。これでは、内容を変えることはもちろん、判断することさえできない。重要な事実がすべて提示されているかさえ知りようがない。
悪いことに、CEO一人体制は、側近の権力の増大をもたらす。CEOは一人で仕事を行うことができないために、腹心、補佐、分析スタッフ、その他諸々の人間に囲まれることになる。彼らはCEOと直接のつながりをもつがゆえに、組織内で神秘的な権力を持つ者と見なされる。ラインの経営管理者の権限を侵し、仕事を奪い、CEOとの直接のコミュニケーションを妨げる。
実は、これまで成功してきた企業のうち、純粋にCEO一人体制をとっている企業は一社もないのではなかったかと思われる。それらの企業は、少なくとも二人、あるいは三人の手によってマネジメントされていた。草創期においては、企業は一人の人間の延長である。しかし、一人のトップマネジメントからトップマネジメント・チームへの移行がなければ、企業は成長どころか存続もできない。
CEOの仕事が多すぎるがゆえに、使い走り、秘書、社長室などをつくり始め、公式には権限を持っていない人たちを通して仕事をするようになります。CEOに会うためには、まずこれらの人たちの許可を得なくてはならなくなり、必要がないと判断されないために、これら側近の人たちを説得したり懐柔したりすることが、マネージャーの仕事になったりします。
これが、側近政治と言われているものです。
CEOは重要な決定をするためにこれらの人たちを周りにおいたのに、意思決定をするための情報は抽象化され、最小限のことしか知らされなくなり、組織は機能不全に陥っていくのです。
これを回避するためにも、重要な意思決定を分業した同格のチームを組む必要があるというわけです。
「ハーパーズ・マガジン(1954年4月号)」の記事が紹介されています。
「ある一流銀行において、顧客企業の善し悪しをみる目安について調査した。調査部の答えは次のようなものだった。『企業トップの報酬が、ナンバーツー、ナンバースリーの数倍になっている会社は、マネジメントがかなり悪い。逆にトップマネジメントの最上位4、5名の報酬があまり違わない企業は、マネジメント全体の仕事ぶりや士気が優れたものであることが多い。報酬の絶対額は問題ではない。』」
意思決定を行うチームが同格の者によって分担されているかどうかは、報酬を見るとわかるということです。側近政治では、その側近たちがCEOと同等の報酬を手にするということはないでしょうから、これによって良いマネジメントを行っている会社を見分けることができるのですね。
2013/8/1