これで「われわれの事業」についての分析がすべて終わったわけではない。次に「われわれは正しい事業にいるか」「われわれの事業を変えるべきか」を問う必要がある。
たとえ偶然にせよ、自らの労力と資源を新しい製品に移行させるという決定、すなわち新しい事業への参入の決定は、「われわれの事業は何でなければならないか」という分析に基づいて行う必要がある。
もちろん、事業の変化が生産性向上の観点から行われることもある。
あるクリスマス用玩具の卸売業者は、ベテラン営業部員という最も重要な資源を一年中活用するために、水着の卸という新しい事業に進出した。この会社では、時間の活用というニーズが新しい事業への進出をもたらした。
ただし、利益だけのために事業の性格を変えようとしてはならない。利益があまりに少なければ事業を放棄しなければならない。しかし事業を放棄するかどうかは、利益の状況より、マーケティング、イノベーション、生産性に関わる状況が先に教えてくれる。
顧客はなぜ我が社のサービスや商品を購入してくれるのか、あるいは購入してくれないのかを問い、将来の事業環境がどうなるのかを予測して、最後に、「それでは、われわれはどのようになるべきか」を問うて、この先の進路を決めるための材料を揃えよ、と述べています。
また、生産性(ヒト・モノ・カネの増減と付加価値の増減との対比)の分析から、事業の方向を変えることもあることを紹介しています。
事業の選択と利益との関係についてドラッカーは次のように述べています。「マーケティング、イノベーション、生産性という事業を事業たらしめるものの観点から、新しい事業への進出が健全な意思決定である場合には、まさに必要最小限の利益を上げることがマネジメントの責任となる。」
2013/6/7