企業利益への反感

「雇用賃金プラン」は企業利益に対する根強い反感を克服する鍵となる。

利益に対する反感へは、利益分配制度を持つことが当然の処方のように見える。しかしこの処方が使われるようになってから既に一世紀以上が経過するにもかかわらず、その効能ははかばかしくない。

利益分配制度は、従業員に利益の機能を理解させることができない。利益は絶対的に必要なものであるという認識を与えることができない。

同じように従業員持株制度も、従業員が株式を保有することによって利益に対する態度を変えるという考えは、あまりに単純である。利益に対する反感は経済的な利害よりも根深い。それは、自らの個としての目的が企業の非人格的な目的に従属させられることに対する抵抗に根ざしている。

従業員の目に企業の目的が利益の追求と映るかぎり、自らの利益と企業の利益の間に対立を確信せざるを得ない。しかし、企業の目的が顧客の創造にあるとするならば、対立の代わりに調和がもたらされる。

企業が利益を上げることについての反感に関し、第20章の最後にも「働く人にとって、利益は誰か他の者の収入である。彼らにとって、利益が雇用や生計や収入を規定するなどと言う考えは、支配への屈服を意味する。たとえ搾取とまでは行かなくとも、専制を意味する。」という類似の記述がありました。

利益分配制度と従業員持株制度についても、問題を緩和するのには役立つが、解とはならないとしています。

その代わりのヒントとして、上記の最後の段落にあるように、従業員の利益と企業の利益に調和をもたらすのは顧客だと述べています。

IBM物語で紹介されたように、不況時にも雇用維持を守るために新たな顧客と市場を作り出さざるを得ない状況を経験することによって、企業と従業員の利害が一致するということを従業員自身が理解したわけです。

ここから学ぶべきこととして、「マネジメントの側にも、企業の目的と働く人の目的との調和、相互依存性、両者にとっての利益の重要性を、誰の目にも見えるようにするための行動が必要である。」とまとめています。

2013/9/30