IBMは何年か前、新型の複雑なコンピュータを開発した。需要があまりにも大きく、エンジニアリングが終わる前に生産に入らなければならなくなった。最終的な設計のエンジニアリングは、生産現場において、技術者や職長が一般の従業員の協力して行った。
ところがその結果、すばらしい設計となった。エンジニアリングは大幅に改善され、生産のコストは安くなり、生産に要する時間は短縮された。しかも、製品と仕事のエンジニアリングに参画した従業員は、その後の生産段階においても優れた仕事を行った。
この経験から得られた教訓は、今日IBMにおいて、新製品の開発や既存製品の改善に必ず適用されている。設計のエンジニアリングの途中で職長の一人が担当管理者に任命され、彼とその部下の従業員があらゆる種類の専門技術者の協力の下に、生産のための工程とレイアウトを決め、個々の仕事を決めていく。
こうして一人ひとりの従業員が、製品、生産工程、さらには自らの仕事の設計に参画している。そして常に、製品の設計、生産コスト、要する時間、従業員満足などの点で大きな成果を上げている。
職務拡大に続くIBMが経験した二つ目のイノベーションの事例で、これもまた偶然に行われたとして紹介されています。
仕事を分業して行っていた人たちが、工程を重ねて仕事をせざるを得なくなったときに、何とかその厳しい条件の中で結果を出すために頭を寄せ合って協力し合い、その結果、時間に余裕のある中で分業して仕事をしていたときよりも良い成果をあげていたことに気づいたわけです。
しかも、それに参画していた人たちは上から仕事を押し付けられるよりも満足度高く仕事をできるようになったということです。
自らの仕事を自分で設計し決めることができるという状態が、自ら努力する姿勢を生み、やりがいのある職場となり、ひいては生産性も向上するという、正のスパイラルを生み出していったというわけです。
2013/9/4