われわれの事業は何かを知るための第一歩は、「顧客は誰か」という問いを発することである。「現実の顧客は誰か」「潜在的な顧客は誰か」「顧客はどこにいるか」「顧客はいかに買うか」「顧客にいかに到達するか」を問うことである。
次の問いは、「顧客は何を買うか」である。GMのキャデラック事業部の人間ならば、自分たちの事業はキャデラックを生産し販売することであると考える。しかし、4000ドルのキャデラックを買う者は、交通手段を買っているのか、それとも富みのシンボルを買っているのか。言い換えると、キャデラックはシボレーやフォードと競争しているのか、それともダイヤモンドやミンクのコートと競争しているのか。
25年ほど前、自社ブランドをもつ食品メーカーが、食料品店は自社の製品を仕入れるとき、実際には「何を買っているのか」という問いを発し、自らの事業を分析した。
5年後にようやく得た結論によれば、食料品店が買っているものは、どこからでも仕入れられるような自社の製品そのものではなく、自社が提供しているマネジメント上のサービス、特に仕入れ、在庫、経理、陳列についての助言だった。
事業を何かを知るためには、まず顧客は誰かから始めよとのことですが、これまた自明のように感じます。自社にある顧客リスト、顧客マスタなどに顧客の名前が入っているからです。
しかし、それだけでは事業の本質に近づくことはできません。それでは、「現実の顧客は誰か」にしか答えていないからです。
ドラッカーは次々と問いを用意しています。「潜在的な顧客(自社の顧客であって当然なのにまだ顧客になっていない人)」は誰なのかを探せ、続いて、それらの顧客・非顧客がどのような分布で、購買方法はいかなるもので、それらの人々とどのように接触を持つのかを考えよ、という訳です。
そのようにして考えていくと、次は顧客が本当に買っているのは我が社が提供している財・サービスそのものではない可能性に気付くはずです。
ドラッカーはキャデラックと食品メーカーの例を挙げていますが、同様のことはほとんどの業界で考えられます。
お客様には、他にたくさんの選択肢がある中でなぜ我が社の財・サービスを選択してくれたのか、を聞くことが大事だと言うことだと思います。
2013/6/4