シアーズ物語から得られる第一の結論は、企業は人が創造し、人がマネジメントするということである。
「マネジメントは、事業を市場に適応させるだけである」という説ほどばかげたものはない。マネジメントは、市場を見つけ出すとともに、自らの行動によって市場を生み出す。
そのためには、シアーズがローゼンワルドやウッドを必要としたように、必ず人を必要とする。しかもかなりの数の人を必要とする。
シアーズ物語から得られる第二の結論は、事業は利益の観点からは定義も説明もできないということである。
事業体とは何かと問われると、たいていの企業人は利益を得るための組織と答える。この答えは間違いなだけではない。的外れである。
利潤動機やそこから派生する利益最大化の概念は、企業の機能、目的、マネジメントとは無関係である。いや、そのような概念は無関係であるよりもさらに悪い。害を与えている。それは利益の本質に対する社会の誤解と、利益に対する根強い反感の主たる原因となっている。
第5章は「事業とは何か(What is a business?)」と題して、企業やその他の組織が行う事業(business)の一般論を展開しています。
最初は、第4章のシアーズ物語から得られる教訓として、①企業におけるマネジメントの役割は市場を生み出すことであり、②事業は利益を得るために行うものではないという2点を挙げています。
まずは、企業を社会的に意味のあるものとして存続させるための市場を見つけ出し、あるいは作り出すための意思決定をするのは「人」であり、経済や景気の波に乗ったりもまれたりするだけの存在ではないということを意味しているのでしょう。
そして、利益の一般的理解である「企業の目的は利益の最大化である」という概念を、徹底的に、しつこく否定しています。
利益を目的とすることは、事業の本質を結局「安く買って高く売ること」にしてしまうため、社会に価値を与えることを二の次にしてしまうから間違っているのだとしていると思います。
この項の中で、利益について次のように述べています。「もちろん、利益が重要でないということではない。利益は、企業や事業の目的ではなく条件なのである。また利益は、事業における意思決定の理由や原因や根拠ではなく、妥当性の尺度なのである。」
利益の機能については、第5章の終わりで別に記述がありますので、そちらでもう一度見ていくことにします。
2013/5/26