社長から工場の現場管理者や事務主任にいたる全員が、明確な目標を持つ必要がある。それらの目標は、自らの部門が生み出すべき成果を明らかにする必要がある。他の部門の目標達成を助けるために、自らや自らの部門が期待されている貢献を明らかにする必要がある。そして、自らの目標を達成する上で、他の部門からいかなる貢献を期待できるかを明らかにしなければならない。
全員が事業の繁栄と存続に関わりのあるあらゆる領域について、自らの果たすべき貢献を明らかにしなければならない。
もちろん、誰もが直接の貢献を果たせるわけではない。例えばマーケティング部門が工場の生産性に貢献できることはほとんどないかもしれない。しかし、ある者とその部門が領域のいずれか一つについていかなる貢献も期待されていないのであれば、その旨は明確にしておかなければならない。なぜならば、彼らもまた、事業上の成果が多様な領域における多様な努力と成果のバランスにかかっていることを理解しておく必要があるからである。
一人ひとりの目標は、長期と短期の観点から明らかにすることが必要である。そして目標は、事業上の定量化できる目標とともに、経営管理者のマネジメント、働く人たちの仕事ぶりと姿勢、社会的責任など定量化できない目標を含むことが必要である。これらの条件を満たさない目標は近視眼的であって、意味がないというべきである。
マネージャーを誤って方向付けする要因の三つ目は、「ものの見方と仕事の違いが孤立化を招いていること」でした。
組織には様々な仕事があり、部門に分かれてそれぞれの役割を果たして全体の成果につなげていくことが必要です。しかし、部門の機能が専門化し、部門の中でも階層によって見えているものや価値があると考えるものが違ったりすると、一人ひとりがめいめい勝手な方向を向いて仕事をするようになり、ひいては孤立化した「ひとり親方」の集団になっていってしまう危険があります。
それを防ぐための手段が、一人ひとりが立てる目標です。その目標は自分は全体の成果のどの部分を担うのか、他の部門にどんな貢献をするのか、また他の部門にどんな貢献を期待するのかが明確になっている、すなわちチームワークを重視した目標になっていなければならないとされています。
第7章「事業の目標」では事業全体の目標設定領域が明らかにされていました。①マーケティング②イノベーション③生産性④資金と資源⑤利益⑥マネジメント能力⑦人的資源⑧社会的責任、の八つです。
一人ひとりの目標もこれら事業の目標とどのような関係にあるのかを明らかにしなければならないのです。ということは、事業と同じように目標が一つだけということはなく、複数の目標をバランスよく立てることが求められています。
2013/7/9