経営管理者の育成とは、トップマネジメントの後任候補として昇進させうる人物を対象とする昇進プログラムのことではない。後任候補という言葉は、今日のトップマネジメントの靴をそのまま履ける人間を探せばよいとする考えを表している。
しかし、仕事が要求するものや組織の構造はこれまでと同様、明日においても大きく変化していく。したがって必要とされることは、昨日の仕事ではなく明日の仕事のための経営管理者を育成することである。
潜在能力を持つ昇進候補という考えも全くの誤りである。ごく短期的な話は別として、人の成長について適切に予測するなどという方法にはお目にかかったことがない。
育成が最も必要なのは、後任候補や昇進候補という花形ではない。昇進するほど優れてはいないが、解雇するほど劣ってもいない人たちである。組織の中の人間のほとんどが彼らであり、彼らが事業の実際のマネジメントのほとんどを行っている。
もし、少数の選ばれた者の育成から何かを得たとしても、そのようなものは多数の無視された者の萎縮、発育不全、不満によって帳消しにされる。
トップマネジメントの人から見れば、自分たちの後任を誰にするのかというのは事業の存続のためにとても重要なことに感じるでしょうから、経営管理者の育成と聞けば、後任者を選定し鍛えていくことと考えがちなのでしょう。
重要な意思決定の影響が及ぶ期間、あるいは意思決定から成果が出るまでの期間が長くなっているため、次のトップマネジメントは今とは異なる経営環境でマネジメントをしなければならず、それを予測して後任候補を育成するなどというのは無理だ、と考えていたのだと思います。
少数精鋭の人たちの能力を伸ばすというような方法にも批判的です。それは、選別から漏れた人たちの意欲を著しく削いでしまうことになるからだとしています。
事業の現場に近いところで日々のオペレーションのマネジメントをしている人たちの意欲が削がれるてしまうと、確かに、組織の生産性をどんどん落としていくことになりそうです。
したがって、それら事業を現場で支えるマネージャーたちを育成することこそが重要なのだというわけです。
2013/8/5