意思決定における最初の仕事は、問題を見つけてそれを明らかにすることである。この段階ではいくら時間をかけてもかけすぎることはない。
問題の理解に当たってとるべき第一のステップは、「決定要因」を発見することである。決定要因とは、何よりも優先して変更し、動かし、働きかけるべき要因である。
決定要因を見つけることは必ずしも容易でない。そこで通常、二つの補助的な方法を使うことになる。一つは「何もしなければ何が起こるか」を問うことであり、もう一つは過去にさかのぼり、「何ができたか」を問うことである。
第二のステップは、問題解決のための必要条件を明らかにすることである。すなわち問題解決の条件を検討しなければならない。
第三のステップは、問題の解決策に制限を課すべき原則を明らかにすることである。守るべき原則は何かである。
あらかじめ原則を明らかにしておくことは、正しい意思決定がしばしば原則そのものの変更を要求することからも必要である。原則とはいわば、その枠内で意思決定を行うべき価値体系である。この体系はいかなる行動をとるべきかを決定はしない。いかなる行動をとるべきでないかだけを規定する。
戦略的な意思決定のための五つの段階の最初は、問題の理解です。
最初にドラッカーは、問題だと思わせる目立つ兆候が鍵であることはあまりない、症状による診断も解決にはつながらないことが多いとし、「経営管理者は、まったく違う問題がまったく同じ症状をもたらし、まったく同じ問題がまったく違う症状をもたらすことを認識し、病状の診断ではなく、客観的な分析を行わなければならない。」ため、上記のように時間をかけてよく考えなさいとしているのです。
問題の理解の段階の中でも三つのステップを経るべしとしました。①決定要因の発見、②必要条件の明確化、③守るべき原則の確認です。
決定要因は少し分かりづらい言葉です。ドラッカーはある台所用品メーカーの例を挙げて理解を促しています。その企業では、10年にわたってコスト削減を行ってきたにもかかわらず利益率が改善されないという問題がありました。利益率を決定する要因をよく分析していったところ、それは製品ミックスに問題があることが分かったという例です。
つまり、利益率の決定要因が製品ミックスであるということを分析により突き止めたわけです。
2013/10/21