働く人は、報酬を超えて、個として、人として、市民として見返りを要求する。仕事において、仕事を通して、地位と機能の実現を求める。
彼らはまた、自らの進歩と昇進への平等な機会という正義の実現を求める。さらには仕事の意義と真摯さを求める。
すなわち、仕事ぶりについての高い水準、仕事の組織とそのマネジメントに関わる能力についての高い基準、優れた仕事に対する明らかな関心こそ、働く人が企業とそのマネジメントに要求するものの中で特に重要である。
前のセクションとは逆に、人が企業に求めるものは何かという考察です。
人は、組織に属していながら自らの行動を支配する存在ですから、常識的には「働いた分だけ給料を支払え」というのがその要求のように考えられますが、ここでもドラッカーは、もっと多くを要求していると主張しています。
それは、上記のように正義の実現であったり、自らに対する高い要求と正当な評価であったりするというのです。
しかし、企業と働く人の双方に要求の行き過ぎには注意を与えています。
「企業は、単に社会の一機関にすぎないものとして、個人に対する要求においても、また彼らに与える満足においても、あるべき領域にとどまらなければならない。働く人に対し、絶対的な忠誠を求めることも、絶対的な責任を約束することも、いずれも許されない。」
要求が高すぎることもまずいが、「労働への対価としての賃金」という低すぎる要求でもいけない。マネジメントはその間で適切なバランスを探さなくてはならないということなのです。
2013/9/10