仕事のエンジニアリングについて、われわれは半世紀にわたって、要素動作の研究に目をくらまされ、仕事は可能なかぎり要素動作と対応すべきであるとしてきた。そのような考えが誤っていることを示す証拠は、既に十分すぎるほど存在した。IBMの例にしても無数の経験の一つにすぎなかった。
しかしわれわれは、これまでのそのような証拠を汚染物として押しのけてきた。科学的ではないとし、エンジニアリングの不足を示すものとして片付けてきた。
そのような誤りの原因の一つが、一人の人の仕事を一つの要素動作とまではいかなくとも、一つの作業に限定したヘンリー・フォードの組み立てラインの驚異的な成功である。これが仕事の科学的、体系的な分析の意味を見失わさせ、その価値を見失わさせた。
「本章の章名は一つの宣言である。幸福や満足ではなく最高の仕事を宣言することによって、人間関係論を超えるべきことを主張する。人間組織を強調することによって、これまでの科学的管理法を超えるべきことを主張する。」という書き出しで第22章は始まっています。
前章で、人間関係論と科学的管理法の特徴と至らない点を指摘し、本章ではそれらの理論を超える理論で、最高の仕事をする人間組織を作り上げることができるようになると宣言しています。
最高の仕事のための人間組織を作り上げるために必要な、仕事のエンジニアリング(=仕事の設計、職務分析)において、科学的管理法とフォードのやり方以外の方法でうまくいった多数の事例を例外として扱ってきたために、その経験を生かすことができなかったとしているのです。
「一つの要素動作ではなく、ひとまとまりの仕事をするとき、人はより効率的に働くようになると言うのであれば、あの自動車工場の組み立てラインの効率と生産性の高さはいかに説明すべきか」
という点に囚われ、実際の経験を生かしてその先に進むことができなかったと説明を加えています。
2013/9/19