経営管理者はきわめて特殊な資源、すなわち人とともに働く。人とともに働くと言うことは人を育成することを意味する。この育成の方向づけが、人としても資源としても、彼らが生産的な存在となるか、非生産的な存在となるかを左右する。
部下の育成には、技術の習得や責任の強調でさえ補えないある資質が、経営管理者の側に要求される。真摯さである。
厳しいプロは、高い目標を掲げ、それらを実現することを求める。誰が正しいかではなく、何が正しいかを考える。頭の良さではなく、真摯さを大切にする。つまるところ、この資質に欠ける者は、いかに人好きで人助けがうまく、有能で頭がよくとも、組織にとっては危険な存在であり、上司および紳士として不適格である。
マネージャーに必要な資質として、「真摯さ」を強調する記述が集中しています。
この部分は、第13章「組織の文化」でも「マネジメントの適性」として真摯さが必要だという記述と内容が重複しています。
いずれの記述においても、真摯さはマネージャーあるいはマネジメントを行ううえで必要な資質だが、後から学んで身に付くような資質ではなく、もともと持っていなければならない資質だとしています。
「真摯さ」は「integrity」の訳語として使われていますが、辞書では他に「誠実、高潔、品位、完全性」という訳語も並んでいますので、確かに仕事を始めてから学ぶようなものではないかもしれません。
人が子どもから大人へと成長する段階で、親や家族や学校や地域社会から影響を受けて形成されていく「性格」としてintegrityを身につけていてほしい、そのような人物を輩出できる社会であってほしいという、ドラッカーの願いが込められているように感じます。
2013/10/18