大企業や巨大企業には、もう一つ大きな問題がある。本社スタッフ部門が肥大化して、スタッフ帝国となることである。
企業には二種類の活動がある。一つは、マーケティングやイノベーションなど事業を生み出す機能であり、もうひとつは事業に何かを供給する機能である。後者は購買や生産のように物理的に財を供給し、エンジニアリングのように頭脳を供給し、経理のように情報を提供する。しかし、それらのいずれもスタッフ機能ではない。
しかし大企業や巨大企業では、無数のスタッフ部門を生み出すという重大な問題を生じている。現業の経営管理者に対し助言とサービスを提供する存在としての専門家のグループを生み出している。
ところが彼ら本社スタッフは現業の経営管理者の仕事を邪魔する。現業の経営管理者に奉仕するどころか、彼らの主人になろうとする。彼らは常に、手法や道具や方法論の画一化を推進する。現業の経営管理者がより良い仕事ができるように手助けするのではなく、彼らの権限や責任を侵食する。
ライン&スタッフ型の組織形態は、教科書でも標準的に扱われるようにメジャーな形態なのですが、ドラッカーはスタッフ部門の存在を激しく批判しています。
それは、スタッフ部門は肥大化しやすく、責任をもたずに権限だけを持つような部門になりやすいという理由に加えて、CEOチームのメンバーがスタッフ部門の長を兼ねることが多く、CEOチームが本来の役割を果たせなくなり、いずれは組織を破壊する存在になっていくからです。
また現業へのサービス提供を機能とするスタッフ部門は、事業全体のニーズや目標よりも自らの専門分野を活動の目的として動くため、現業への分権化よりも集権化への推進役になりやすいという面も持っています。
こういったスタッフ部門のデメリットを理解し、地道なスタッフ育成をすれば問題は解決するという見方に対して、ドラッカーは批判をさらに激しくします。
「私は気質に基づく機能など信用しない。この理想的スタッフ像とされているものこそ、最も危険な腐敗した人間像であり、黒幕であり、策士であり、責任を負わずに権力を持とうとする者の姿に見える。」
スタッフ機能については、さらに次のセクションにも続きます。
2013/8/29