IBMの例が現場管理者の仕事のあるべき姿を教える。人と仕事のマネジメントに関わる問題のうち、現場管理者の仕事の組織については、IBMの経験ほど多くを学べるものはない。
第一の教訓は、現場管理者の仕事は、完全に経営管理者の仕事でなければならないということである。現場管理者は大きな責任をもたなければならない。IBMでは、現場管理者はプロジェクトの経営管理者として、新製品の生産の準備について責任をもつ。
現場管理者の仕事は、事業全体の目標から直接その目標が設定され、事業全体の成果によって直接その成果が評価されるだけの大きさのものである必要がある。
第二の教訓は、現場管理者たる者は、自らの責任を果たすうえで必要な活動を自ら管理し、それらの活動に必要な部下を持たなければならないということである。
万事がうまくいっている日でさえ、現場管理者は超多忙である。仕事を立派に行おうとするならば、書類への記入を行っているような暇はない。そのような仕事のための事務係を必要とする。また、部下の相談に乗ったり、情報を伝えたり、新人を訓練するような指導係を必要とする。
第三の教訓は、現場管理者の権限の縮小という一般的な傾向を逆転させなければならないということである。IBMでは、現場管理者自身が雇用、推薦、解雇、訓練、昇進、配置などを行っている。
第四の教訓は、現場管理者が率いる組織単位は、今日一般に見られるものよりも大きくしなければならないということである。そうすることによって初めて、現場管理者はマネジメントに対し、働く人を代表しうるだけの地位にあることになる。そして、一般従業員の最高賃金の一割増というような水準以上の給与を与えることができるようになる。
前のセクションで述べられた、明確な目標は第一の教訓に、マネージャーとしての地位については第四の教訓につながるものです。
第二の教訓では、事務係と指導係という部下が必要という部分を抽出しましたが、それ以外にも、エンジニアリングや原価計算、工具補給、機械修理を担当するような部下も必要だとされています。
また、第三の教訓で、雇用に関する権限を与えるべきとの考えについて、次のような例を挙げています。
「ある大手自動車メーカーが、最近、新規採用の決定権を本社人事部から現場管理者に移した。書類審査、面接、試験は人事部が行うが、候補者の採用についての最終決定は現場管理者が行う。この結果、大幅な生産活動の改善を実現した。その原因は、適材を選べること、採用される新人たちが何を期待されているかを理解するようになったからだ。」
人事に関する権限の一部を現場管理者に委譲することによって、より現場で必要とされる人材を確保できるようになるということです。
上記のような四つの教訓をもとに現場管理者の仕事を正しく組織できるようになってくると、その現場管理者はまさにマネージャーとしての仕事の訓練をしていることとなり、さらに責任の思いマネージャーの候補として昇進の機会を得られることが当然の組織になっていくということなのです。
2013/10/10