事業にとって必要な組織の構造を知るための第三の分析は、経営管理者同士の関係についての分析である。それぞれの経営管理者は誰と協力しなければならないか。他の活動を担当する経営管理者のために、いかなる貢献を行わなければならないか。
経営管理者の仕事を定義するには、彼の部門が属する上位の部門に対する貢献を考えることから出発しなければならない。つまり、まず上との関係を分析し、明らかにする必要がある。
さらには、上との関係だけでなく横との関係も分析する必要がある。なぜならば、経営管理者にとっては、担当外の活動に対してなすべき貢献も、常に重要な仕事の一部であり、時には最も重要な仕事だからである。
関係分析は、いかなる組織の構造が必要かを決定するうえで必要不可欠になっているだけでなく、いかに人員を配置するかという重大な意思決定においても必要となっている。事実、仕事に伴う諸々の関係を分析することによってのみ、人事は適切に行い、かつ成功させることができる。
まず第一に、事業の成果に結びつく活動を分析・整理する活動分析、第二に成果をあげるために必要な意思決定をどのレベルで行うのかと言う意思決定分析を経て、第三の経営管理者同士、すなわち部門同士の貢献の連鎖がどのような構造になっているかという関係分析を行いなさいとしています。
一つは部門の上下関係分析で、上位の部門に対して自分の部門がどのように貢献するのかを分析し、例えば、トップマネジメントの意思決定を左右するような貢献を求められている部門であるのに、トップマネジメントへの直接の接触ルートをもたないような構造にしてはならないと言っています。
もう一つは、横の部門間の関係分析です。ドラッカーが例として上げているのは、マーケティング部門担当のマネージャーの仕事です。「彼らは、受注のために働く営業部隊を管理する販売担当のマネージャーだが、これだけでは企業が最も期待する貢献の実現ができない。例えばエンジニアリング部門は、マーケティング部門からのみ、その必要とする新製品についての情報や既存製品の改善についての情報を得ている。生産部門も、マーケティング部門からのみ、売り上げの見込みや納入の日程など重要な情報を得ている。」
他の部門に貢献する、情報をタイムリーに提供するというような関係を分析することによって、今の組織構造がよいのか、もっとよい構造があるのかを理解することができるとしています。
本章の最後に、三つの分析(活動分析、意思決定分析、関係分析)を行うには、「中小企業の場合には数時間と数枚の紙を要するだけ」ですが、「いかに単純な中小企業であっても、これらの分析を行わなかったり、いい加減に行ったりすることは許されない。」と述べているので、重要な作業であることがわかります。
2013/8/11