明日の経営管理者には、一つではなく二つの種類の準備が必要である。一つは、経営管理者になる前に身につけることのできるものである。すなわち若いときから身につけることのできるものである。もう一つは、経営管理者としての経験があって初めて学ぶことのできるもの、いわば社会人教育によって身につけることのできるものである。
今日大学で教えている科目のうち、経営管理者の準備として最も有効な職業教育は、詩を書くことと短編小説を書くことである。自らの考えを表現する方法、言葉とその意味、文章を書くことを教えることである。ただし、卒業直前の一回だけでなく、常時行わせる必要がある。
目標によるマネジメント、事業の分析、さらには目標の設定とそのバランス、目前のニーズと遠い将来のニーズの調和について学ぶには、人としての成熟に加え、マネジメントの経験が必要である。
リスクを評価しリスクを負うためには、経験が必要である。判断を行い意思決定を行うためにも、経営管理者としての経験が必要である。
ビジネススクールで人事管理論を学んだから人をマネジメントする資格があると思っている若者ほど、役に立たず悲しむべき存在はない。害を与えるだけの存在となる。
明日のマネジメントの課題を果たすには、既にマネジメントにある人たちのための高等教育が必要である。今後マネジメント教育が、成人すなわち経験豊かな経営管理者に対する高等教育へと焦点を移していくことは間違いない。
仕事につく前に身につけておくべき知識と、ある程度仕事の経験を積んでから改めて学ぶことにより身に付ける知識が、これからのマネージャーには必要であるとしています。
「詩を書くことと短編小説を書くこと」とは少し誇張した表現だと述べてはいますが、一般教養が必要なことを主張したものです。かつての一般教養の内容は現代の社会で行われている仕事を行う前提となるように見直さなければならないけれども、若いうちに学ぶべきものであるとしているのです。
また、ビジネススクールを一概に否定するものでもなく、ビジネスやエンジニアリングの科目についても評価しています。それらの教育によって、仕事につく前に何らかの機能別の能力を磨くことには意味があるとしています。
ただ、上記の後半に述べられているように、マネージャーとしての経験をしていない者には理解できない分野があります。それらの分野については、実務において失敗や成功を経験することで身をもって理解できるようなものです。
このような経験を通してしか学ぶことのできないものについては少ない事例しか学べないので、一定の経験を持つ人に対してその経験を一般化した教育を施すことで、経験に裏打ちされた知識として定着させることができるようになります。
社会に出てある程度仕事の経験を積んだ人向けの教育ニーズでもありますが、一人ひとりはマネジメントを学び続けなければならないと言うことの裏返しでもあります。
2013/10/31