報奨は仕事の目標と直接結びつける必要がある。長期的な利益のために目標間のバランスが必要であると説いておきながら、短期的な利益によって給与を決めるようでは、経営管理者の方向づけとして最低である。
報酬システムは、なすべき水準をはるかに超えて優れた仕事を行った者に対し、特別の褒賞を与えることができないほど硬直的なものにしてはならない。
あるメーカーの技術部に、決して昇進はしなかったが、長年にわたって新人の技術者をなにくれとなく指導してきた人がいた。彼がしてきたことを技術部の者はみな知っていた。しかし彼の貢献は、ついに在職中は報われなかった。
この種の貢献に対しては、その貢献が行われているときに報いる必要がある。そのように報いることは直接目に見える業績の向上はもたらさないかもしれない。しかし優れた組織の文化を生み出す。
単に優れた組織と卓越した偉大な組織を分けるものは、仕事が要求するものを超えて貢献しようとする人たちの意欲にある。そのような範となる人たちを持つ組織は幸運である。
特別の貢献に対する報奨は、名誉勲章やヴィクトリア十字勲章のように稀であってよい。しかしそれは、それらの勲章と同じように大きく目立つものである必要がある。
組織全体の目標としては八つの領域で目標を設定することが必要だとされていました。そして、組織に属する一人ひとりの仕事には①直接の成果②顧客価値への取組み③人材育成それぞれの面での目標が必要となります。(経営者の条件)
無難なレベルではなく挑戦的な目標を立て、失敗を乗り越えて達成するものを明確な基準によって評価するところまでが前のセクションで、その評価に基づいてフィードバックすなわち報酬を支払うべきだというのがこのセクションです。
報酬システムにもこれが完璧というものは難しいですが、少なくとも上記のように短期的な成果だけを報奨の基準とするようでは長期的な目標や人材育成面で貢献する人はいつまでも報われないままになってしまいます。
そういう仕事をする人の成果は後にならないと顕在化しませんが、報酬は貢献をしている時に報いるべきだとしているのです。
直接の成果を上げた人から見ると、成果が出ていないのに努力に対して報酬を支払うというように見えてしまうかもしれません。そういった不満を抱かないようにするためにも、長期的な目標に対する貢献をしているということを、みなが分かる形で表現する必要があるということなのだと思います。
2013/7/23