事業の存続とまではいかなくとも、その繁栄は明日の経営管理者の仕事ぶりにかかっている。事業上の意思決定が実を結ぶまでの時間が長くなった今日、特にこのことがいえる。未来を予測できない以上、現在の意思決定をフォローしてくれる者、すなわち明日の経営管理者を選び、育成し、その能力を試しておかないかぎり、合理的かつ責任ある意思決定を行ったことにはならない。
経営管理者の育成は、企業が社会に対する責任を果たすうえで必要である。もし企業が自らその責任を果たさなければ、社会がそれを強制する。今日、企業の存続は社会にとって決定的に重要だからである。社会は、今日のマネジメントを引き継ぐべき有能な後継者の欠如のために、富みを生むべき資源が危機に瀕するなどということを放置できないし、放置するはずもない。
経営管理者の育成とは、仕事や産業を生計の手段以上のものにするという、マネジメントに課された責任の遂行そのものである。すなわち企業は、一人ひとりの経営管理者に対し、彼らの能力を完全に発揮することのできる挑戦の機会を与え、そうすることによって、産業における仕事を一つの生き方にまで高めるという、社会的な責任を果たさなければならない。
第15章は、組織がマネージャーを自ら育成する必要性について述べている章です。最初のセクションでは、なぜマネージャーの育成を自ら行わなければならないのかという点について、三つの視点から必要なんだと整理しています。
上記の三つの責任をさらに要約すると、一つ目は、その組織が未来にわたって継続していくため、二つ目に、その経営資源を有効に活用するという社会的責任を果たすため、三つ目にマネージャー一人ひとりに生きがいを与えるため、ということになると思います。
二つ目の「社会がそれを強制する」という表現は、あらゆる組織は社会を構成する機関であり、社会に対して何らかの貢献をし続けることによって社会から存在を許されているわけだし、逆に貢献をできなくなったのなら退場させられるという考え方を表したものです。
現代社会は組織によって構成され、組織は人によって構成されます。一人ひとりの人が組織に貢献することを通して社会に貢献する、という貢献の連鎖によって、一人ひとりの自由と社会の繁栄が達成されるのが理想的な社会だとしたものだと思います。
2013/8/4