いかなる組織構造が必要かを知るための第二の方法は、意思決定分析である。事業目標を達成するには、いかなる意思決定が必要か。組織のいかなるレベルにおいてなされなければならないか。
私は、ある大企業の場合、過去5年間になされた意思決定の90%が定型的なものであって、その種類はごく僅かであることを発見した。しかしこの企業では意思決定分析を行っていなかったために、常に問題の4分の3が本来行うべき組織レベルよりもはるか上の階層で行っていた。
事業上の意思決定を分類するには四つの基準がある。
第一の基準は、意思決定の息の長さ(時間的要因)である。その意思決定は、どのくらいの期間にわたって企業の行動を拘束することになるか。そして、どのくらい早く変更することができるか、である。
第二の基準は、意思決定が、他の部門、他の領域、あるいは事業全体に与える影響の大きさ(影響度)である。一つの機能あるいは一つの領域におけるプロセスや成果の最適化は、他の機能や領域を犠牲にして行ってはならない。つまり部分最適であってはならない。
第三の基準は、行動規範、倫理的価値観、社会的信念、政治的信条など、意思決定に含まれる価値的な要因の大きさ(質的要因)である。
第四の基準は、意思決定が反復して起こるか、それとも特異ではないにしても稀にしか起こらないか(反復度)である。
ドラッカーは特定の企業の過去5年間の意思決定の内容をすべて預けてもらって、分析をしたというのです。それだけその企業から信頼されていたということなのでしょう。
それはさておき、結果としては意思決定が本来行うべきよりもはるか上位の階層で行っていたということは、その部下たちは上司に判断を委ね、責任を引き受けず、自由もないという組織風土の中で、成長も阻害されていたということが想像できます。
どのような意思決定をどのレベルで行っていたのか、それを四つの基準で分析しその結果を受けて、今後の意思決定はどのレベルでどの決定を行うのか、を考え直していきなさいということなのです。
「意思決定は、原則として、常にできるかぎり低いレベルの現場に近いところで行う必要がある。しかし同時に、影響を受ける他の活動や目標について十分考慮できる高さのレベルで行う必要がある。」とまとめています。
2013/8/10