いかなる仕組みをつくろうとも、マネジメントへの昇格人事で日頃言っていることを反映させなければ、優れた組織の文化をつくることはできない。本気であることを示す決定打は、人事において、断固、人格的な真摯さを評価することである。
真摯さはごまかしがきかない。一緒に働けば、特に部下にはそのものが真摯であるかどうかは数週間でわかる。部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法などほとんどのことは許す。しかし真摯さの欠如だけは許さない。そしてそのようなものを選ぶマネジメントを許さない。
人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者をマネジメントの地位につけてはならない。ーー組織の文化を損なうから。
「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心を持つ者を昇進させてはならない。ーー組織を堕落させるから。保身に走り、間違いを隠すから。
真摯さよりも頭脳を重視する者を昇進させてはならない。ーーそのようなものは未熟だから。
有能な部下を恐れる者を昇進させてはならない。ーーそのようなものは弱いから。
自らの仕事に高い基準を定めない者を昇進させてはならない。ーー能力に対する侮りの風潮を招くから。
特にトップマネジメントへの昇進においては真摯さを重視すべきである。部下となる者すべての模範となりうる人格を持つ者だけを昇格させるべきである。
正しい組織の文化を醸成するには、もちろん制度設計が明確になっていることが必要ですが、組織がそのメンバーに対して真摯であることが必要だと前節で述べた後、では、一人ひとりのマネージャーにはどんな資質が必要かというと、何と言っても真摯さを評価すべきだとしています。
ドラッカーは「真摯さは習得できない。仕事についたときにもっていなければ、後で身に付けることはできない」と述べています。これまで仕事をしていく上ですべきことについてたくさんの説明がありましたが、訓練によって身につけることができるから皆頑張れというスタンスだったのに対し、この真摯さという資質だけは訓練によって身に付くものではないとしているのです。
仕事につく前に真摯さを持っていない者は、どんなに他の能力を訓練で身に付けたとしても、マネジメントの地位に就けてはならないと言うことですから、これはとても恐ろしいことです。
しかし、正しい組織文化とするためには真摯さをもたぬ者を昇進させてはならないということは、もっともらしいと理解できます。
そうは言いながらもドラッカーは「真摯さは定義が難しい」として、逆に真摯さの欠如を例示することで簡単に見分ける方法を教えてくれました。
2013/7/27